クラレ・東レ…PFAS対応加速、素材メーカーが規制強化を商機に
半導体 離型フィルム、金型汚れ低減
東レは5月、先端半導体向けモールド離型フィルムを発売した。ポリエステルフィルムを使い、PFASフリーの離型層と革新的な微細構造制御技術「ナノアロイ技術」を活用することでフッ素系フィルムに近い柔軟性を実現。PFAS不使用ながら、モールディング工程で課題となっていた金型汚れを従来の5分の1以下に低減した。先端半導体製造の稼働率向上に貢献できると見ている。 同製品は半導体パッケージングの後工程であるモールディング工程に使われる。モールド樹脂を覆い、外部環境から保護する役割を持つ工程で、モールド樹脂と金型の間には離型フィルムを設置するのが一般的だ。ただ従来の離型フィルムはPFAS材料が使われており、過度な柔軟性によるフィルム破れやシワの発生による歩留まり、生体への影響懸念が課題となっていた。 東レは独自技術により、金型汚れの原因物質を遮断するガスバリア性を向上。先端半導体の形状が複雑化していることを踏まえ、モールド成形時のフィルム破れや、シワがモールド樹脂に転写されるのを抑制する耐熱柔軟性も備えた。 同社はすでに、先端半導体分野を中心に想定を上回る問い合わせを受けているという。一部メーカーでは採用も始まっており、拡大に向けた評価も進んでいる。 フィルム事業本部ルミラー事業部門ルミラー事業第1部情報材料第2課の矢内真二課長は「30年をめどに、周辺用途を含めて売上高40億円を目標に掲げている。PFASフリーなど近年の環境規制への対応を進め、社会に貢献していきたい」と手応えを示す。 PFASの使用を避ける動きは、繊維分野にも広がる。足元ではPFAS不使用の撥水素材の開発や置き換えが進行中だ。帝人フロンティア(大阪市北区、平田恭成社長)では国内外の規制や欧米を中心とした顧客の声を受け、すでに大半がPFAS不使用の製品となっている。