YouTubeクリエイター・バヤシが語る“世界基準の考え方” 億超え再生動画の制作秘話を聞いた
2023年12月13日、日本での開催が10周年を迎えた『YouTube Fanfest Japan 2023(以降、YTFF)』に、チャンネル登録者2160万人を誇るバヤシが出演。「料理×ASMR×音ハメ×大食い」をテーマにショート動画を投稿し、YouTubeを席巻中だ。 【写真】バヤシの撮り下ろしカット 奇天烈な料理法から生み出される、視覚的にも聴覚的にも刺激的な食べ物を頬張る姿は、人々の欲望を掻き立てる。テンポの良い編集も相まって動画は日本だけでなく、海外からの注目度が段違いだ。 そんなバヤシに、YTFFの出演にあわせインタビューを実施。今年の活動を振り返りつつ、ターニングポイントとなった海外クリエイターとのコラボやコンテンツをバズらせるための戦略について話を聞いた。 ・「過半数以上の人に楽しんでもらうとなると、世界のトレンドに寄っていく」 ――今年は昨年よりYouTubeに力を入れている印象でした。今年を振り返っての感想を教えてください。 バヤシ:あまり力を入れた感はなかったんですけど、結果としてそうなったなと思ってはいます。というのも、今年の春から夏にかけて有名動画クリエイターとのコラボが増えたんです。コロナの緩和と同時に日本に行きたいという海外のクリエイターさんからたくさんオファーをいただきました。自分の投稿のノルマとして、毎日ショート動画を1本投稿するというのもあってネタを探していた時期でもあったので、コラボのお誘いはできるだけ受けていましたね。 なかでもMrBeast(※1)やZach King(※2)など、大物とのコラボ動画はしっかりバズって、より自分の勢いも増した気がします。 (※1)MrBeast :個人ユーザーとしてはトップのチャンネル登録者数を誇るアメリカのYouTubeクリエイター。(2023年12月21日時点) (※2)Zach King:手品のような演出のデジタル編集された6秒動画「マジックバインズ」が代表作のアメリカの映像作家。 ――名だたるクリエイターさんたちですね……! 海外クリエイターからのコラボオファーを多く受け取れたのはバヤシさんの動画がノンバーバルであることも大きな要因ですよね。 バヤシ:そうですね。あとは自分は料理を中心に動画を制作していますが、できる限り、料理以外にもいろんなトレンドのネタを取り入れています。そういった動画もバズっていたことで、マルチクリエイターという見え方になり、声がかかりやすかったのかもしれません。 ――料理以外のトレンドネタもキャッチしているとのことですが、バヤシさんが思う今年特に熱かったトレンドがあれば、教えていただけますか? バヤシ:シグマフェイスは自分がショート動画をやってきた2、年3年のなかでは類を見ないほど、かなりの人が触れていたし、バズる動画もたくさんあったと思います。トレンドって、たくさんあるので注目度が急上昇した後は、沈みやすいものです。でも、シグマフェイスは応用を利かせられるネタだったので、流行っていた期間が長かったんだと思います。 (※3)シグマフェイス:YouTubeクリエイター・ARGENが動画を投稿したことで流行した、眉を下げて、口をとがらせる表情。 ――バヤシさんは基本的には海外のトレンドを取り入れる方向性なんですね。 バヤシ:結果的にそうなりますね。自分のYouTubeのフォロワーがインドに一番多くて、次にアメリカが多いんです。日本の人ももちろんたくさんいるんですけど、多くの人にわかりやすい動画を作るように心がけると海外の方のことを考えるようになるんですよね。たとえば、「阪神優勝」など日本の流行りを取り入れると、世界のユーザーからは分かりにくい動画になってしまうので。 ――視点がワールドワイドですね……! たしかに海外から見たら日本は小さいですね。 バヤシ:はい。海外のなかに日本があるという感覚なので、過半数以上の人に楽しんでもらうことを考えると世界で流行っているトレンドに自然と寄っていくんです。もちろん、自分が日本人なので日本の方にも楽しんでもらいたいんですけど、重きを置くのは日本よりも世界になりがちですね。 ・揚げ物の方が“不健康そう”に見えてエンタメ感が増す ――先ほど、海外クリエイターさんとのコラボのお話ができましたが、やはりこちらは今年のターニングポイントになったのでしょうか? バヤシ:そうですね。6月頃にMrBeastとコラボするために、アメリカに行ったことは大きな転換点になりましたね。3週間程滞在したので、彼だけでなく、いろんなクリエイターさんとコラボしたんです。そのときにChef Rush(※4)とのコラボ動画が5億回再生超えを記録しました。その1本がバズることで他のショート動画を観てくれる方も増えましたし、総集編の長編動画も回るようになってくれたので、それだけでアメリカに行った価値があったと思います。 (※4)Chef Rush:アメリカの有名シェフであり、退役軍人。YouTubeのチャンネル登録者数は453万人。(2023年12月21日時点) ――5億回再生を越えたChef Rushさんとのコラボ動画を制作する上で、工夫した点や難しかった点はありますか? バヤシ:どんな動画を撮ろうかずっと考えていて、そんなに確定してないなかで撮り始めたんです。構成としては、チーズを重ねてChef Rushが失敗して、僕がトレーナー的な感じでトレーニングをさせて、Chef Rushがチーズをうまく重ねられるようになる。最後は教えた自分が失敗してChef Rushにしごかれるという流れで。途中までは僕が考えた構成なんですけど、オチはその場にいたほかのYouTubeクリエイターがアイデアをくれたんです。しかも僕はチーズを揚げようと思っていたんですけど、その手間も省けるなと。時間的にも疲れ的にも、揚げるよりは自分が潰されて終わる方が面白いし、Chef Rushの良さも出るし、省エネだなっていう。その場で出たアイデアで楽しく撮影できました。 ――バヤシさんの動画では揚げ物を作ることが多いですよね。インパクト重視で揚げるという調理方法を選んでいるんですか? バヤシ:そうですね。揚げ物って、音も良くなりますし美味しそうにも見えると思ってます。あと、不健康そうに見えてエンタメ感が増すんで、サラダを美味しそうに作って食べるよりも、お肉を揚げた方が飯テロ感は強くなる。実際に自分がサラダよりも揚げ物の方が好きだし、美味しいと感じるという理由もあるんですけどね。 ーー最後に大きなテーマになりますが、バヤシさんにとってYouTubeとはどんな存在ですか? また今後の目標があれば、教えていただけないでしょうか? バヤシ:自分のなかではYouTubeの良さって、長尺の動画を見てもらって確実なファンを作り、固いコネクションを作れるという点にあると思うんです。でも、現時点では、ショート動画のおかげで、2000万人ほどのフォロワーを獲得できたものの、長尺動画による濃いファン獲得にはまだまだ至っていなくて。 そこで当初の目標でもあった、長尺動画でバズらせられたら、クリエイターとしてステップアップできると思いますし、YouTubeをより素晴らしいプラットフォームだと言えると思うんです。チャンスはいま来ていると思うので、目標を達成したいと思っています。
取材=丹治健太/構成=村上麗奈