年商20万円から1億円に プロ野球界では心配された「優しすぎる性格」が養豚業で開花した 元ソフトバンク鷹のドラ1が目指す日本一の豚
第2の人生は戸惑いだらけのスタート「豚肉の値段がわからない」
江川智晃さん(37) 「これまで野球しかしてこなかったので、不安はすごく大きかったです。」 最初は、豚肉がスーパーでいくらで売られているかも知らなかった。先輩従業員から養豚や肉のさばき方を一から教わって、早朝4時半から精肉作業を行う毎日がスタートした。 江川智晃さん(37) 「従業員たちのお給料も払わないといけないし、自分も食べていくためにちゃんと稼がないといけない。肉の味は間違いない。一度食べてもらえれば必ずファンになってくれるはずだと信じて、“一志SPポーク”というブランド豚として店頭に並べてくれる店を探し回りました」
仲間が困難を乗り越える力に 「江川さんのためなら」
苦しい時期に江川さんを救ったのが、プロ野球選手としては優し過ぎると言われたまさに彼のその人柄だった。 最初の頃は中々豚肉を置いてくれる店が見つからず、飛び込みで営業に行っても何度も断られた。 しかし半年が経とうとしたころ、徐々に口コミで味の良さが広がり、販売してくれる店が増えていった。中には「一志SPポーク」を置くために冷蔵庫を増設してくれるところもあったという。 さらに、ひたむきに家業の立て直しに取り組む江川さんの背中を、仲間たちが押してくれる。直売所をオープンした時には、柳田悠岐選手や中村晃選手といったソフトバンクのスター選手から大きなお祝いの花が届いた。 江川智晃さん(37) 「開店祝いの花を見るために多くの人が店に集まってくれて、それがきっかけで味を気に入って常連になってくれた人がいたんです」 またほぼ同じタイミングで高校時代のチームメイトは、「自分たちのヒーローが地元に帰ってきてくれた。江川のために何かしたい」と自身が経営する居酒屋で「一志SPポーク」のトンカツをメニューに加えてくれた。 そして、その翌年、球団を離れたにも関わらず、ソフトバンクの本拠地・PayPayドームから、『スタジアムグルメとコラボレーションしないか』と声がかかった。課題だった販路が拡大していき、ますます江川さんの豚肉のファンが増えていった。