本当に伝えたいのは、無私・無欲の庶民のヒーロー 歴史学者・磯田道史氏
『殿、利息でござる!』は、この世の中を良くするかもしれない
「“絵空事”と言う人はいるかもしれませんが」と前置きすると磯田氏はある数奇なめぐりあわせを語り出した。 「この本を書いたあと、京都の古書画屋さんで、ふと知り合った人が、僕の本に感動して娘さんに贈ってくれた。その娘さんは仙台の東日本放送に務めていたのですが『開局40周年としてこの作品を映画にしよう』って言ってくれ、親友の女性アナウンサーにその本を送った。本をもらったその女性アナウンサーは読んで感動して『こういう本を映画化したら』と話した。その夫こそ、この映画を撮った中村(義洋)監督でした」。 奇跡ともいえるようなめぐりあわせだが 「無欲・無私な人々の話に共感できる感性をもった人はこの国に意外と多い。『感動のドミノ倒し』が起こってできた映画。この作品を観たお客さんが、日本人の美徳や分かち合うことの素晴らしさをどんどん広めていってくれると思う」と熱く語った磯田氏。 「本だけだったらそこまで広がらなかったかもしれませんが、映画が力を与えてくれた。この映画は、すこしばかり、この世の中を良くするかもしれない。芸術というのは、そうした野望を実現できる力をもっていると僕は信じている」 (取材・文:磯部正和)