ポイントは下半身の瞬発力!パドレス・松井裕樹 「173㎝でもメジャー強打者を抑えられるワケ」
「正直言って、ここまでの活躍は予想外でした。楽天時代に3度の最多セーブに輝いているとはいえ身長は173㎝。日本のプロ野球選手としても小柄な身体で、メジャーの強打者を抑えられるとは……」 【画像】パドレス・松井裕樹がメジャー強打者を抑えられるワケ…「連続写真」で徹底解説 スポーツ紙担当記者が、こう評するのはパドレスの松井裕樹(28)だ。 楽天から海外FA権を行使して昨年末にメジャー入り。契約金額は推定5年総額2800万ドル(約44億円)と、ドジャースの大谷翔平(10年総額約1092億円)や山本由伸(12年総額約507億円)に比べ期待が大きくなかったことがわかるだろう。しかし、開幕してみれば3月29日のホーム開幕戦で今季日本人投手として初勝利をあげるなど、5月14日現在2勝負けなしで4ホールドの成績。中継ぎエースとして大活躍しているのだ。 なぜ小柄な松井がメジャーで躍動できるのか。動作解析の専門家で、筑波大学体育専門学群教授の川村卓(たかし)氏が語る。 「コンパクトな動きに見えますが、身体をダイナミックに使っています。ポイントは下半身の瞬発力。股関節を曲げて一気に伸ばす『伸展(しんてん)』という動作で、小さな身体から大きな力を出しています」 左腕・松井の投球を連続写真で見ながら、川村氏の解説を聞こう。 「①ではセットポジションからスグに軸足へ体重を乗せ始動しています。瞬発力を出すためでしょう。大谷など大柄な投手が、ゆったりと動くのと対照的です」 ②では下半身の動きに注目したい。 「股関節を使い深く沈み込みながら、お尻はバッターの方向に向かっています。『ヒップファースト』という理想的な状態です。重心を軸足に残したまま下半身が突っ込まないように、うまく体重移動ができている証拠でしょう」 圧巻は③だという。 「②で曲げた股関節を一気に伸ばし右脚を地面に突き刺すイメージで、下半身の力を上半身に伝えています。胸を大きくそらし、反動で弓のように腕を勢いよく振り下ろしている。一連の動きを瞬時に行うことで、ボールに力強さを与えています。通常のメジャー投手は身体の大きさを活(い)かしていますが、松井投手は瞬発力で強打者をも圧倒する球威を生み出しているんです」 ④でポイントとなるのは右脚だ。 「伸びた右脚を地面にしっかり踏み込んでいるため、上半身を二塁方向からバッターへ向かい一気に回転させられています。テコの原理です。⑤では右脚を利用し上半身を思い切り倒していることが、よりわかるでしょう。楽天時代の松井投手は最速154㎞/hのストレートと落ちるボールで勝負していましたが、メジャーではさまざまな変化球を織り交ぜストレートの威力をより引き出しています」 チームトップクラスの登板数を誇る松井。課題もあるという。 「疲れが溜(た)まる夏場をどう乗り切るかが問題です。登板数が増え球威が落ちれば変化球も活きませんから」 予想を裏切る活躍をみせる「小さな大投手」が、勝負の夏を迎える。 『FRIDAY』2024年5月31日号より
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