東通で原子力防災訓練/住民「屋内退避」 実効性に課題も/交通規制 あくまで「要請」
青森県は9日、東北電力東通原発1号機(東通村)の重大事故を想定した県原子力防災訓練を同村などで行った。原発の半径5~30キロ圏内から車で避難しようとする住民に対し、引き返して「屋内退避」するよう求める交通規制の訓練を初めて実施。道路網が脆弱(ぜいじゃく)な下北半島の渋滞対策の側面もあるが、あくまで口頭での「要請」にとどまるため、対象住民への周知と実効性担保が課題として浮かび上がった。 原子力災害対策指針では、大量の放射性物質が放出される恐れがある場合、原発に近い5キロ圏は避難、5~30キロ圏は屋内退避とする。県によると2022年末時点で5キロ圏には村内で約2400人、5~30キロ圏には約3500人が住む。 訓練では、同村小田野沢地区(5キロ圏、約700人)住民が避難時に通る国道338号と交わる村中心部の道路上にパトカーを横に止め、5キロ圏以外の車が国道に流入しないよう道をふさいだ。警察官は住民役のドライバーに事情を説明し、「自宅での屋内退避をお願いします」と要請した。 県は避難計画のガイドラインで、国道338号への流入を防ぐ交通規制は、東通村2カ所とむつ市2カ所で実施し、所要約2時間と想定。ただ、強制力はなく「協力のお願い」(県担当者)にとどまるという。 下北半島は避難経路が限られるため、5キロ圏以外の住民が先に車で動いてしまうと、原発に近い住民の避難に支障が出かねない。一方、1月の能登半島地震では建物の倒壊が多数発生。地震や津波との複合災害時には屋内退避が難しい場合もあることが判明した。10月、原子力規制委員会は屋内退避を続ける目安を3日とし、解除や避難への切り替えは「国が判断する」との方針を示している。 村内の漁業男性(76)は「まずは逃げたいと思うのが人間の心情。ずっと屋内退避ではつらいものがある」と考えを巡らせる。訓練を視察した宮下宗一郎知事は「早く逃げたいと思う住民感情として(屋内退避は)なかなか難しく、理解活動を推進していく必要がある」と述べた。 訓練には自治体職員や住民ら約1100人が参加。避難所開設や簡易除染、孤立地区から住民をヘリコプターで搬送するなどの訓練も行った。