「排尿後に温水洗浄便座を使う」のはアリ?ナシ?誰も教えてくれない“正しい使い方”を医師に聞きました
知らないことだらけ!?「温水洗浄便座」の正しい使い方
ここからはアンケート結果を踏まえ、福山先生に、温水洗浄便座の使用について詳しくうかがっていきます。 ―トイレって、とてもプライベートな場所だけに、これまで他人と温水洗浄便座を「使う」「使わない」といった話をしたことがありませんでした。だからこそ、本当にこの使い方で合っているの?という疑問もあります。 「たしかに、隣に座っている人が“温水洗浄”の機能を使う人かどうかなんて、知らないし聞こうとも思わないですよね。例え家族でも、誰が使っているか知っている人は少ないのでは? 結局、“使う” “使わない”は、個人の判断次第なんだと思います。 今や多くのトイレに備わっている機能でありながら、使い方を誰かと話題にすることもなければ、学校の授業で教わることもない。なんだか、謎に包まれた存在ですよね」(以下「」内、福山先生) ―本当にそうですね。この記事が、その謎の一端を明らかにするものになりますように!
【大便の場合】お腹がゆるい時は、洗浄前に紙で拭き取りを
―今回のアンケートでは「使う派」「使わない派」共に、衛生面を心配する声が特に目立ちました。先生から見た、それぞれの用途ごとの「清潔に使用するための注意点」とはどんなものでしょうか? まずはメインの用途とも言える、排便時について教えてください。 「肛門周りの洗浄のために“おしり洗浄”機能を使うのはもちろんOKです。先にトイレットペーパーで拭いてから“おしり洗浄”をしても、拭く前に“おしり洗浄”をしても、どちらでも問題ありません。 ただ、スルリと排出される健康的な便であれば、実は肛門周りへの便の付着はほとんどないんですね。健康的な排便が出来ているのなら、必ずしも洗浄機能を使わず、紙での拭き取りだけでも良いと思います。 水圧を強くしすぎないように注意し、局部内に直接水流が当たるような使い方をするのは避けましょう」 ―お腹がゆるい時の「おしり洗浄」の使用はいかがでしょうか? 「下痢や便がゆるい場合の使用は注意が必要です。肛門周りに便の汚れが付着したままの状態で温水を当ててしまうと、汚れが広がりやすく、加えてお尻に当たった水が便器に落下する際に、そこでもまた汚れが飛び散る心配も。 そのため、お腹がゆるい際に温水洗浄便座を使う場合は、使用前後の拭き取りをしっかりとするようにしてください。拭き取りが不十分だと、特に女性の場合は、肛門と近い位置にある膣や尿道に汚れが広がり、膣炎や膀胱炎を起こすリスクもあります」 ―アンケートでは、「排便を促すために温水を当てている人がいる」といったコメントもありました。こちらの使い方はいかがでしょうか……? 「排便を促す目的での使用は避けたほうが良いでしょう。 温水を当てなければ便が出ない、というのは自然な排便とは言えません。最初は弱い水圧で済んでいたとしても、刺激に物足りなさを覚えるようになり、水圧を弱から中、強と上げていくうちに、温水を当てることありきでの排便に陥ってしまう恐れがあります。 あわせて、本来の用途と違う使い方をすることで、ノズルが汚れたり故障したりする懸念もあります」 ―自分では良かれと思っていた使い方でも、膣炎や膀胱炎の原因になる可能性があるとは……。今一度、自分の使い方を見直してみる必要がありそうですね。 ♦️感染症の罹患時に、ノズルがウイルスの隠れ家になることも 「ノズル汚れに関連してもう1つ、ノロウイルスなどの感染症に罹患している際の使用についても注意が必要です。 ノロウイルスの場合、便を通しても感染するので、温水洗浄便座を使用することによって便中に含まれるウイルスが周囲に飛散し、感染が拡大してしまう恐れがあります。また、ノズル部分がウイルスの隠れ家となることも考えられます。 自分だけでなく、家族の誰かが感染症にかかっている際には、温水洗浄の機能は使わないことがベターです」 ―『kufura』読者には、子育て中の方も多くいます。お子さん自身が「おしり洗浄」機能を使うことはあまりないかもしれませんが、子どもが持って帰ってきた胃腸炎などが家族内に広がるケースも多いですよね。 「感染症にかかった際、便座や床、壁の消毒には意識がいきますが、ノズルは見落としがちです。家庭内でノロウイルスなどが発生した場合は、使い捨ての手袋とマスクでしっかりと防御した上で、ノズル部分も入念に次亜塩素酸ナトリウム液を用いて消毒することをおすすめします」