高校サッカーの監督がプロで活躍できるのか!? 結果で示した黒田剛の”強い組織の作り方”【J1町田快進撃の秘密②】
「組織は必ず壊れるもの」という概念を持つ
黒田 強い組織になるためには、まず、「組織は必ず壊れるものだ」という概念を持つことが必要だと思います。組織とは、人が形成するもの。毎日、その姿や表情が変わるのは当たり前で、今日良ければ明日も良いとは限りません。その感覚を、まず持たなければならない。そうすると、「ちょっと横道にそれているな」とか「周りの雑音に動揺しているな」といったことを瞬時に感じ取れ、軌道修正ができます。 それから、チームにとってマイナスの要因は、いっさい排除するようにしています。選手はみんな一生懸命頑張っているし、人生をかけてサッカーに取り組んでいるわけです。その選手たちの妨げになるような、ネガティブな発言や行動は、いっさい認めませんし、チームの中でそうした言動をすれば、疎外されてしまうという空気感を、組織に植えつけることが重要というか……。これが、みんなが一体になれる、大きなポイントのひとつじゃないでしょうか。 ――著書『勝つ、ではなく、負けない。』の中で黒田氏は、「チーム立ち上げ時のガイダンスで、しっかりとルールを意識させて横道に外れにくい状況をつくり、誰か一人がネガティブな空気を出すとチームのみんなに咎められるような組織づくりをしていく。これが、『強い組織』を作るための最重要ポイントです」と綴っている。それは、どんなチームであっても、たったひとつの出来事やたったひとりの存在によって、壊れるということを、いやというほど経験したからこそだ。 次回は、「リーダーのあるべき姿」をテーマに話をしてもらう。 黒田剛/GO KURODA 1970年生まれ。大阪体育大学体育学部卒業後、一般企業勤務等を経て、94年、青森山田高校のコーチとなり、翌年教員、そして監督に就任。以降、全国高校サッカー選手権26回連続出場、 同大会を含む計7回の日本一という偉業を達成する。2023年、FC町田ゼルビア社長、藤田晋氏に請われ、同チームの監督に就任。2023シーズンの優勝、J1昇格に導く。 太田宏介/KOSUKE OTA 1987年東京都生まれ。ジュニアユース年代をFC町田(現・FC町田ゼルビアジュニアユース)で過ごし、2006年、横浜FCでプロデビュー。その後、オランダのSBVフィテッセやFC東京など国内外のチームを経て、2022年、FC町田ゼルビアに加入。2023年のJ1昇格に貢献し、現役を引退。現在、チームのアンバサアーとして宣伝担当を担い、解説やサッカー教室など幅広く活動する。
TEXT=村上早苗