とても美しく同時にグロテスク…唯一無二の王者レアル スターシステムゆえの弊害と途方もない底力【コラム】
サッカー界のトレンドは関係なし…レアルの伝統的手法は「戦術より人が先」
ここ11シーズンで6回優勝の原動力だったトニ・クロース、ルカ・モドリッチのゲームメークも2人の個人能力に依拠したもので、選手が代われば必然的に戦術も変わっていく。戦術よりもあくまで「人」が先にあるのが伝統的なやり方なのだ。そして戦績はレアルが正しいと教えている。 近年の欧州サッカーは非常にシステマティックだ。選手個々の動き方、プレーの仕方は予め決められていて、マニュアルどおりにやるのが普通になってきた。しかし、レアルはそうしたトレンドとは関係がない。圧倒的な個をかき集め、そのわりには、というかそれゆえに粗も目立ちながら、結局のところはなんとかまとめて最後は勝っていく。 半ば自作自演にも見える劇的勝利の連続は、スターシステムゆえの弊害と途方もない底力の両面を見せつける。ほかのクラブにレアルは真似できないし、たぶんしようとも思わないだろう。とても美しく同時にグロテスクでもある唯一無二の存在だ。 [著者プロフィール] 西部謙司(にしべ・けんじ)/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、「サッカー日本代表戦術アナライズ」(カンゼン)、「戦術リストランテ」(ソル・メディア)など著書多数。
西部謙司 / Kenji Nishibe