“ボロ家ハラスメント”報道のいなば食品 「仰天釈明リリース」に批判殺到でも意外と逃げ切れる背景
芸能人など有名人のスキャンダルも同様で、謝罪会見など開かずそのまま逃げ切った人もいます。ただ、芸能人は、逃げ切る=存在も消えるということになるため、スキャンダル叩きからは逃れられる一方、芸能活動そのものもなくなってしまうという大きなリスクを覚悟しなければなりません。 大ヒット商品をいくつも擁し、抜群の商品力を持ついなば食品。同社抜きにペットフード売り場は成り立たないほどの巨大な存在です。市場から製品への強いデマンドがあることは何よりの武器です。
どれだけマスコミやネットに叩かれても、今回は商品に関する不祥事ではないため、肝心の商品が売れてくれさえすれば、逃げ通せる可能性は十分あるのではないでしょうか。 今回の事件は同社も事実をある程度認めているという潔さはあるので、実際のペットフードユーザーにとっては他人事ととらえてくれ、愛猫愛犬が同社の商品を好んでいるのならこれまで通り買い続けてくれる可能性は高いでしょう。 では、いなば食品はこのまま逃げ切れるのか? といえば、それはそう簡単ではありません。いま日本中の企業、特に製造業を直撃している人手不足問題があります。
昨今の学生は企業研究においてネット情報を重視します。過去に起きたさまざまな企業スキャンダルやトラブルは、デジタルタトゥーとして長く残る可能性が高く、今回のような採用に関するトラブルはかなりのインパクトを与えるリスクがあるでしょう。 特に「新卒者への扱いがひどい」という今回のニュースは、就活学生がもっとも重視するネガティブ情報です。今どきの学生がまず最初に気にする「社風」に関する情報として、今回の文春報道のようなわかりやすいダメな例はなかなか類を見ません。この報道やリリースを読んでも大丈夫という強い信念のある学生ならよいのかもしれませんが、そんな学生がどれだけいるのかは不明です。
私は採用支援のコンサルティングで、「面接官教育」にも力を入れています。採用促進において、今どきの学生の好みを読んで情報提供をしないと、特に知名度の劣るB2B企業の場合、採用は困難を極める恐れがあると指摘してきました。 ■一番恐れるべきリスク また、今回いなば食品は採用において「労働条件通知書」を出していないとも報道されています。労基法によって、労働条件通知書においては必須記載情報があります。それは労働契約期間、更新基準、就業場所、就業時間、賃金・昇給など、法律で文書として発行が義務付けられているものです。