「MEGUMI」2冊目となる美容本 “不倫されて離婚”を経たゆえの説得力が(レビュー)
前著「キレイはこれでつくれます」が20万部越えのベストセラーとなり、名実ともにすっかり美容のカリスマとなったMEGUMI。「美の」カリスマではなく、あくまで「美容の」カリスマという点が支持の所以というべきか。努力すればこんなに変わるのだという実例を自らで示すことで、「私はもっと美しくなれるのだろうか?」と迷える女性たちの心を掴み牽引してきた。 本書は、そんなMEGUMIによる2冊目の美容本である。 スキンケア、メイク、ボディやヘアケアの際、常に心がけていること、使っている製品、使い方のコツや向き合い方等々が述べられている点は1冊目と同じだが、前著がハウツー寄りであったのに対し、本著では、タイトルの「心に効く美容」の通り、メンタルへの働きかけを重視した内容になっている。 ケアに使う製品は、高価な物からプチプラまで、自らが聞いて試して効いたものを紹介。自身のプロデュース品が掲載されていたりして信頼性に欠ける、よくあるタレント美容本とは異なり、著者は、常に周りの人間に「いいもの」を尋ね、それを実際に試して、良かったものだけを本で伝えている。周りの人間が「塩マニアの鍼灸師」だったりするところにも、著者の求道者っぷりが窺える。
■前著との最大の違いは…
有名人は、通うサロンなどを明かしたがらないものだが、本書では実際に通っている店舗の情報を掲載。一見さんお断りの御用達系や、予約困難な高級店ではなく、「ぱっと予約できて、その日に解決してくれるサロンがベスト」と断言。地方で仕事の時は、ホットペッパーで探して地元の店に行くこともあるという。特別なケアばかり求めがちだが、美容院でただシャンプーしてもらうだけでも、手っ取り早く気分転換になっていいそうで。一周回ったこうした利用の提案も、研鑽を積んだ者ならでは。 美容に対する姿勢も熱量も変わっていないのはわかったが、本書が前著と最も異なる点といえば、「著者を取り巻く環境」であろう。 どんなに美容を極めて美しくなったところで、それが幸せに繋がるとは限らない。そんな視線が投げかけられることも加味したのか、本書は、内容の半分ほどが「美容を通じて模索する心のありよう」について費やされている。 「夫が若い女に心移りして離婚」。その事実も辛いが、それを日本中に知られるキツさたるや。血を吐くような想いを経て、また前を向き、歩き出すことができるまで、どんな心の動きや経緯があったのかが、かなり正直に綴られている。美容という概念が、そうした時にどんな形で救いとなったのかも。 単に美しくなるためのものではなく、生きることの助け。その救世の様を見ていると、美容とは、もはや宗教といえるのではないかという気がしてくる。宗派が一つでなく、いろいろあるという点も、おかしな原理主義者が存在するという点も。 美容道をわかりやすく説き、迷える民を救ってきた著者は、いわば「正教」に位置づけられる。心の安寧と自己成長を促してくれるその存在は、現代を生きる女性たちにとって、大げさではなく、ある意味本当に救世主に見えているのかもしれない。 よくある惹句ではなく、真の意味での「福音書」がここに。 [レビュアー]今井舞(コラムニスト) 東京生まれ。小学校から大学まで、エスカレーター式女子校にて、観察眼を鍛えながら過ごす。大学在学中にライター業を開始。美容を中心に、ファッション、インタビューなど、何でも屋として活動中に、タレント格付け本『女性タレントミシュラン』(情報センター出版局)を出版。テレビ批評が生業となり、現在に至る。 協力:新潮社 新潮社 Book Bang編集部 新潮社
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