「“自分だけはバレない”は安易な考え」団体・組織が誹謗中傷に法的手段を取ることで強まる“加害者”処罰の可能性【弁護士解説】
誹謗中傷の悪質性、違法性の「境界線」
ーーFC町田のケースでは、クラブ代表が「もう限界。既に多大な実害、実損が出ており、これ以上はもう看過しないことを決意しました。イジメの構図と同じです。この状況を変えるには、対象者がインパクトのある処罰を受けることで、コトの重大さを理解してもらうしかないと思っています」とし、泣き寝入りしない意向を表明しました。では実際のところ、SNS上での誹謗中傷の悪質性、違法性はどのあたりに「境界線」があると考えられるでしょうか。 荒木弁護士: 分かりやすくいえば、自らの意見や論評の表明にとどまらず、言われた人の社会的評価が低下したり、とても傷ついたりするような発言をした場合には、民事・刑事上の責任を問われる可能性は高くなります。 民事上の責任でいうと、名誉権侵害であれば社会的評価が低下したかどうか、名誉感情侵害であれば主観的名誉や自尊心が毀損されたかどうかが、判断の分かれ目になります。 また、刑事上の責任でいうと、事実を適示したか否かで、名誉毀損罪と侮辱罪の判断が分かれることになります。 ーー誹謗中傷する人の実像や心理はどのようなものなのでしょうか。 荒木弁護士: 自分だけはやってもバレないというような、安易な考えで行う人が多数だと思います。また、スキャンダルなどで炎上したような人たちに対しては、みんな誹謗中傷しているから自分もしても問題ない、という心理が働いてしまっていると考えられます。 ーーどうすればこうしたSNS上での誹謗中傷をなくすことできるとお考えでしょうか。先生のお考えをお聞かせください。 荒木弁護士: インターネットやSNSで誰でも簡単に意見を表明できるようになった反面、誹謗中傷をするハードルも低くなってしまった現状があります。誹謗中傷行為をする人たちの多くは、違法行為をしているという認識はないため、まずは民事・刑事上の責任を負う可能性があることを認識する必要があります。 また、そもそも誹謗中傷をしている人たちは、相手が一人の人間であるという意識が希薄になっていることが考えられます。自分の家族や友人に対して言えないことは、第三者に対しても発言するべきではありません。インターネットやSNSで発言する際には、自分の発言が誹謗中傷にあたらないか、いったん立ち止まって考える時間を作ったうえで発言すべきであると思います。
弁護士JP編集部