医師が警鐘を鳴らす「筋トレブーム」の落とし穴 筋肉増強剤で「胸筋」が「おっぱい」になる副作用も
■「睾丸の萎縮」や「頭髪の脱毛」も たとえば、主な副作用としては、 ▽乳房が女性化する(おっぱいのようになる男性もいる) ▽睾丸(こうがん)の萎縮、精子数が減って子どもがつくれない ▽肝機能低下 ▽頭髪の脱毛や、体毛が少ない場所に以上に毛が生える多毛症 ▽イライラ、暴力衝動が高まるなどの精神的症状 などが挙げられる。 「乳房が女性化したら、美容形成手術を受けることになりますが、自費診療のため高額を支払う羽目になります。睾丸が小さくなっていることに自分で気づき怖くなって、医療機関を受診する人もいます」(高橋さん) さらに問題なのが、使用をやめると一気に「弱くなってしまう」人が多い点だ。 「アスリートで、副作用が出たり、中には奥さんから子どもが作りたいと言われて中止する人もいたりしましたが、筋力が衰えるため成績が下がり、結局、また頼ってしまうのです」 ちょっと使ってみよう、という軽い気持ちが、ありえないパワームキムキの体を手に入れた結果、どんどん沼にはまっていく。効果が出ない人は、摂取方法を変えたり量を増やしたりと、無限ループに陥る。気付けばドーピングに取りつかれてしまった、依存症のような状態になってしまう。「一回が一回では終わらず、やめられなくなってしまう非常に怖い薬なのです」と高橋さんは強く訴える。 副作用を抑える薬も輸入できるため、ネットの掲示板では使用方法も“指南”している。ただ、高橋さんによると、副作用を抑える薬の効果も、個人差がある。副作用が進み過ぎて、困り果てた患者を数多く見てきたという。
■使う側は「開き直っている」 高橋さんはこう指摘する。 「日本は対策が後手に回ってしまっています。明らかに手を出さない方が良いのですが、使う側も副作用がなんだと開き直っているのが実態。自己責任で済ますのではなく、中高生のうちに教育の場でリスクを教える必要がある。その段階にきていると思います」 とあるアナボリックステロイドに関するネットの掲示板で、使用者の思しき男性がこんな胸中を吐露していた。 「これだけいろいろがんばっているのに、なんで自分はあんな(ムキムキの)体になれないんだろうと思ってしまいます」 大胸筋がおっぱいになっても、同じことを思えるかどうか。薬に頼って手に入れた「ムキムキ」の先に、大きな代償が伴う可能性は知っておく必要がある。 (國府田英之)
國府田英之