年金17万円、父を亡くし豹変した76歳母を「老人ホーム」へ入居させるも…「実家」をめぐって50代の息子ふたり、疲労困憊のワケ【CFPが解説】
不動産の相続をする際、相続税をできる限り抑えたいと思っている人は多いでしょう。しかし、不動産相続について正しい知識がなければ、節税に走った結果、思いもよらぬ事態に発展するケースも……。本記事では、Aさんの事例とともに、不動産相続の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
効果の高い相続税の節税策「小規模宅地の特例」
相続税の節税スキームとして小規模宅地の特例を活用するという方法があります。 非常にインパクトのある特例で、自宅の土地を相続する際に評価を80%も落とせるというものです。5,000万円もする土地の評価を1,000万円にできるというわけですから、そのインパクトは絶大です。大きな効果のある特例なだけに、厳格に適用要件が定められていますが、細かく要件を伝えることは本記事の趣向ではありませんので、ここでは割愛します。 活用されるモデルケースとして、夫婦で同居して暮らしていたが、夫が先に他界して、妻が自宅を相続してそのままその家で暮らし続けるケースです。 厚生労働省の簡易生命表によると、令和4年の男性の平均寿命は男性81歳、女性87歳です。夫が先立ち、そのあと妻が自宅で一人暮らしをするというのは、老後の姿としてイメージしやすいのではないでしょうか。 内閣府の統計によると令和元年現在の総世帯数は5,178万世帯に対して、65歳以上の方がいる世帯数は2,558万世帯、令和2年の女性65歳以上の単身世帯数は441万世帯、男性65歳以上の単身世帯は231万世帯と高齢者の単身世帯は増加の一途をたどっており、令和22年には65歳以上の単身世帯が896万世帯にもおよぶと推計されています。 生涯独身の方のみならず、結婚して夫婦生活を送られた末、老後の最後は「独身の一人暮らし」というのは日常ありふれた光景になりつつあります。 このように夫が先立ち、妻が残されてマイホームで一人暮らしをするのであれば、小規模宅地の特例を活用して、相続税の節税をしたうえで、夫亡きあとの生活を営んでいくというのが自然な流れといえるでしょう。 しかし、相続税の節税効果があるからと、妻が自宅を相続するとその後に思いもよらない展開があることも知っておいたほうがよい相続の側面です。