「相続登記」4月に義務化、どう変わる? 「過料10万円以下」以外のデメリットは【司法書士が解説】
「相続登記の義務化が4月から始まる」。そんなニュースを見聞きしたという人も多いでしょう。「相続登記」とはどんなもので、義務化によって何が変わるのでしょうか? 登記のプロである司法書士の中島美樹さんに、相続ポータルサイト「相続会議」の岩井建樹編集長が聞きました。 【画像】「相続登記」、手続きしないと将来に〝ツケ〟 中島美樹:司法書士法人あかし代表司法書士。「相続で家と家族を守る司法書士」を掲げ、相談者に寄り添う。一般社団法人東京都不動産相続センター代表理事も務めている。 岩井建樹:相続会議編集長。東京の不動産価格が高騰し過ぎて賃貸暮らしのため登記未経験。実家の不動産も引き継ぎたくないと思っているので、相続登記にも縁がないかも。
「登記=自分のものだとの主張の証拠」
ーー岩井編集長:そもそもの話ですが、「登記(とうき)」って何ですか? 中島司法書士:登記とは、土地や建物がどこにあって、面積がどれくらいで、誰が所有者なのかを、誰でも確認できるようにするための制度のことです。そして、こうした情報を記した帳簿は、登記簿と呼ばれます。 ーーなぜ登記が必要なんでしょうか? たとえば、一戸建てにAさんの名で表札がかかっているとしても、その土地と建物はAさんのものとは限りませんよね。AさんはBさんに借りているだけかもしれません。この場合の所有者はBさんです。 所有の権利は、表札のように目に見えるものではありません。登記は、そうした目に見えない権利を証明するためのものです。登記をすることで「この土地や建物は私のものだ!」と第三者に証明することができるようになります。 登記は必要書類をそろえ、法務局に申請します。通常、日常生活の中で登記に携わる場面はなく、家を購入した時に初めて体験する人が多いかと思います。 ーー賃貸暮らしの僕にはなじみがないわけですね。さて、本題の「相続登記」について教えて下さい。 相続登記とは、亡くなった方の不動産を相続した人が「私が不動産を引き継ぎました」と示すための手続きです。「相続した不動産の名義変更」とも言われます。 ーー2024年4月1日から義務化されると聞きました。何がどう変わりますか? これまで相続登記するかどうかは相続人の任意でしたが、自分が不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記しなければいけなくなります。2024年3月までに、つまり義務化よりも前に相続した不動産についても、対象となります。 ーー期限内に登記しない場合、どうなるのでしょうか? 「正当な理由」がないにもかかわらず、期限内に登記をしなかった場合には10万円以下の過料が科せられる可能性があります。 ーー過料10万円以下なら、相続登記にかかる費用と手間を考えると、そのまま放置しようという人もいそうです。 そこは安易に考えないほうがよいでしょう。過料の支払いをもって義務を履行したことにはならず、義務は残ります。 ーー過料は一度だけ科されたら終わりというものではなく、相続登記するまで何度も科せられてしまうということでしょうか? 今の時点で「そうです」と断定まではできませんが、その可能性はあるでしょう。 <【相続メモ】 過料を免れるための「正当な理由」としてあてはまるのは、「相続人の数が極めて多くて登記するために時間がかかってしまう」「遺言書の有効性について争われて不動産を誰が相続するか決まっていない」「相続人が重病だったり経済的に困窮したりしている」などの場合が想定されます。 また相続登記の義務化にあわせて、「相続人申告登記」がスタートします。これは、上記のような事情で相続登記を3年以内にできそうもない人が、簡単な手続きで「自分が相続人です」と国に申し出ることのできる制度です。相続登記の義務を「とりあえず、取り急ぎ」免れ、ペナルティを回避できます。>