マイルスさえもこき使った、若きジャズ・レーベル社長の悪評とは?
マイルスさえもこき使う、ワインストックの悪評とは?
この当時ワインストックと関わったミュージシャンは、マイルス・デイビスを筆頭に、セロニアス・モンク、モダン・ジャズ・カルテット、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーン、ジャッキー・マクリーン、エリック・ドルフィー、マル・ウォルドロン等々と綺羅星のようなモダン・ジャズのスターたちが並んでいる。ただ、彼らはもとより、ジャズ・ファンの間でも、ワインストックがこの時代やったことは、すこぶる評判が悪い。 ワインストックの悪評は、以下のふたつに集約できるだろう。ひとつは専属契約制を採用し、ミュージシャンの活動をしばったこと。もうひとつはリハーサルもやらせないで経費を徹底的にケチり、つまりはジャズ・アルバム制作への愛が感じられないということになる。 マイルスがコロムビアとの契約をし、プレスティッジとの契約を果たすために、たった2日間で大量の録音をこなし、アルバム4枚分の演奏を残したいわゆるマラソン・セッションの話は有名だが、プレスティッジは、これらをマイルスの人気が沸騰した時代に、期間をあけ、一枚づつ新作のように出して高セールスを記録した。また、ジョン・コルトレーンがソプラノ・サックスの演奏で有名になると、プレスティッジにはソプラノの演奏は残してないのに、ソプラノを吹いているカバー写真を使って、残っていた録音を新作のように出すなど、ファンも笑ってしまうようなことを実行している。 こうしたことから、ワインストックには、ハムレットのシャイロックのような金の亡者のイメージがジャズ界に定着しているが、こうしたワインストックを擁護する人もいる。※次回につづく (文・青木和富)