「52間の縁側」で人と人を結ぶ介護施設 千葉・八千代 探訪
タンタンタン。緑が映える雑木林の中から、縁側を行き来する懐かしい音が聞こえてくる。千葉県八千代市のデイサービス(通所介護)施設「52間の縁側」は、庭に面して約80メートルの縁側が一直線に延びている。建物全体で木材の骨組みがむき出しで、木のぬくもりが感じられる。一般的な介護施設とは違い、自動ドアや受付もない。 「人生の最期を過ごす場所が閉鎖的であってはいけない。共生していける場所を広めていきたい」と運営する「オールフォアワン」(千葉県習志野市)の石井英寿代表(49)は語る。 石井さんは、介護老人保健施設で8年間働いた経験とその時に抱いた思いを元に平成18年に独立。千葉、習志野両市にデイサービス施設を開設した。さまざまな人が触れ合い、家族のように過ごせる「ごちゃまぜケア」をモットーに活動を続けている。 52間の縁側は令和4年、「お互いさま」「向こう三軒両隣」といった日本の長屋文化が象徴する共生をコンセプトに生み出された。 木造平屋建て、延べ床面積約500平方メートル。南北に延びる長い縁側が特徴的だ。独りで居ても、自然と他者の存在が感じられる空間になっている。 「一人一人に合った介護があり、社会から介護の必要な高齢者らが切り離されてはいけない」 石井さんがそう話す夕刻の庭先では、確かにおのおのの時間を過ごす人たちが縁側でひとつにつながっていた。(写真報道局 関勝行)