新設の公立中高一貫「奈良県立国際中高」その魅力 進学先を「あいうえお」順で発表する理由とは?
こだわりの授業「グローバル探究」
重子:特別な授業の1つ「グローバル探究」について教えてください。 中尾:地球規模の課題について3年間を通して探究活動を行うのが「グローバル探究」で、週に3時間ずつ勉強しており、学校の教育活動の中心に位置づけています。例えば今、中学1年生が探究しているのは、「ボルネオ島の熱帯雨林」について。熱帯雨林がどんどんパーム油のプランテーションに換わってきていることで、動物に影響が出ているという問題です。 日本にいる子どもたちにとってはすごく遠い問題のように感じがちですが、実はそのパーム油をシャンプーやお菓子などで使っているのは日本の子どもたちでもあるのです。まず子どもたちには自分が普段使っている商品のパッケージを見て「あ、ここにパーム油がある」と知ってもらい、世界と自分たちがつながっていることを感じてもらう。そこから「じゃあ自分たちの身の回りの小さなことから、地域のことなど、グローバルと自分たちがつながっているものが何かないかな」と考えさせるのです。 重子:その授業を経て、学校で子どもたちが使用しているせっけんを、パーム油を使用していないものに替えたのですよね。真の国際人はこうしてつくられていくのですね。 中尾:はい。高校生の場合は、2年生ぐらいからちょっと視野を広げて、世界にどんな課題があるかなっていうことを考えさせる。2年生になると6つのゼミに分かれます。イメージは大学生のゼミ活動に近いと思います。それぞれのゼミに担当の先生が2人つき、いっさい指導はせずに寄り添っていく。3年生になると、高校生は自分たちで国際会議を開催し、ほかの国の高校生とも意見を交換します。 重子:ほかには、「異学年交流」があったり、たくさんの留学生が在籍したりしているんですよね。 中尾:そうですね。留学生は、4年間で15人くらい来ています。日本語をしゃべれない状況で来ても、急にすごくしゃべれるようになったりするんですよ。本当にすごいです。そういう子たちが、つねに身近にいる環境をつくっていくことで、違いって面白いなとか、すごいことだなと感じてくれたらと思っています。 高橋真由(編集:以下、高橋):その多様性を学べる環境はいいですね。インターナショナルスクールなどであっても、国内にある学校で国際的な空気感をつくるのは難しいと聞いたりもします。自然にそれができるのはいいですね。 中尾:はい、ありがたいですね。文化や考えの違いを楽しみ、自分や周りの人を大切にしながらつながることは重要だと思います。 重子:違いを楽しむ。多様性って「大変」って思われがちだけど、本当は学びが多くてワクワクすることですよね。 中尾:はい、これは余談ですが、中学校のミッションを考えている時に、文言が「違いを『楽しむ』でいいの?」と聞かれたのです。でも、楽しむくらいの気持ちがないといけないと思っていて、自分のこだわりで残しました。 重子:ここでも、いちばん大事なのは校長先生のぶれない軸なんですね。