「長年のよだれや汗の悪臭で吐き気がする……」国を守る自衛隊員たちの想像を絶する悲惨な生活実態
【自衛隊官舎】 入隊から2年を過ぎ、結婚した自衛隊員は拠点外に住むことが許される。ここで自衛隊官舎に家族と居住することになるが、この官舎も一部の高級幹部用の緊急参集要員住宅を除いて、ほとんどが老朽化している。ドアポケットもひどく老朽化しており、初めて官舎に入った隊員は「これまでの生涯で見た中で一番ボロイ建物で唖然とした」と言っていた。 自衛隊の官舎でよく見るのがこの昭和の遺物・バランス釜だ。浴室内の風呂釜の隣に湯沸かし釜が併設されるため、極端に風呂釜が狭くなる。足を小さく抱いて入らなければ浴槽に浸かることはできない。 しかも、官舎にある老朽化したモノは入居後に使用不能だとわかることも多い。この画像のバランス釜は入居時に使用不能だとわかり、修繕を願いでたが半年たっても修理の見込みがつかず、別の住宅に引っ越しすることとなった。官舎の設備の故障が原因の転居でも、自己都合の転居費用は自衛隊からはでない。 風呂釜に併設されたバランス釜がシャワーの湯沸かし器でもあるため、半年にわたってシャワーも水しか使えず、ただでさえ風呂場はコンクリート剥き出しの床だ。真冬に震えながらシャワーを使う。こんな住宅でも官舎は有料だ。そのうえ、退去時にはかなりの修繕費用を請求される。 昭和に建てられた官舎には裸電球のソケットが吊るされている。蛍光灯が使えない官舎も多い。壁の表面がボロボロになった公務員住宅も存在する。自衛隊員と家族は気持ちよく生活することはできないだろうと思う。
たとえば、米軍では劣悪な職場環境が摘発されると、health hazard認定され、管理者が懲罰を受ける。この自衛隊のレベルであれば多数の解雇者がでることだろう。日本でも一般の労働者は「労働安全衛生法」で職場環境は守られているが、自衛隊員は違う。自衛隊法第108条で労働基準法、最低賃金法、じん肺法や労働安全衛生法等の法令は隊員に適用しないと定められている。 国を護るために命を懸ける自衛隊員は労働者として国に守られない。そんな自衛隊員に「国を護ってほしい」と言うのは厚かましい、と言われても仕方がないだろう。 この寝具や官舎の更新予算がやっと’24年の概算要求にあがった。この予算が無事通過し、自衛隊員の生活環境が改善されることを心より願う。 取材・文・写真:小笠原理恵 国防ジャーナリスト。関西外国語大学卒業後、フリーライターとして自衛隊や安全保障問題を中心に活動。19年刊行の著書『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。公益財団法人アパ日本再興財団主催・第十五回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞
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