巨大ブラックホールの撮影に挑む ── 日本チーム代表・本間希樹氏に聞く
今年4月に南極を含む世界6カ所、8台の電波望遠鏡で観測
── ブラックホールの撮影はどのようにして行われるのですか? 本間氏 VLBI(Very Long Baseline Interferometry)と言われている、電波望遠鏡を組み合わせて観測をする手法です。この手法自体は、日本でも岩手、鹿児島、小笠原、石垣の4つの電波望遠鏡を組み合わせて観測している手法と同じですので、我々に馴染みのある観測方法です。日本でのVLBIの観測について言えば、最近、韓国の望遠鏡もいっしょに観測することとなり、日韓共同で観測をしています。いくつもの望遠鏡を組み合わせることで地球サイズの望遠鏡が出来るのです。そういう手法の観測を私たちはずっとやっていて、同様の手法で世界の望遠鏡を組み合わせるとブラックホールが見えるだろう、ということで2008年くらいからブラックホールをとらえる取り組みが出てきました。 ── 実際のところブラックホールを写真に撮ることは可能なのでしょうか? 本間氏 今年4月に南極を含む世界6カ所、8台の電波望遠鏡による地球規模の観測を初めて行いました。いずれも波長が1ミリ程度の電波を使う電波望遠鏡で、その中には日本も参加して建設された南米・チリのアルマ望遠鏡も含まれています。波長1ミリ程度の電波望遠鏡を使うのは、波長が短いと視力が上がり、細かいものが見えるようになるからです。4月の観測データが今秋、上がってきますので、そこからデータを画像化する山場を迎えることになります。 ── なるほど、観測データを画像化するわけですね。 本間氏 データを精査するのに2カ月くらいかかります。良いデータが出れば、画像化するのは上手くいけば10分でできてしまいます。上手くいかなくても1週間あれば結果は出ます。データをベストな画像にする、そこはソフトウエアの開発なのですが、そこも実は日本の研究者は取り組んでいて世界トップクラスのレベルにあります。EHTに我々が開発したソフトウエアを使ってベストな画像を引き出す新しい手法を提案したところ、アメリカの研究者も別の方法を提案してきました。結果的にEHTのイメージングチームの中に4~5つのチームが独立してでき、それぞれのチームでデータ解析をして比較をし、互いにチェックをする予定になっています。