韓国で牛「ランピースキン病」拡大 農水省、警戒呼びかけ
発熱、泌乳量減 国内では未発生
農水省は、国内未発生の牛の感染症・ランピースキン病への警戒を呼びかけている。韓国で拡大し国内への侵入リスクが高まっているためだ。致死率は低いが回復に数カ月以上かかる場合もあり、回復まで牛は出荷できず、精液や生乳も廃棄が求められる。同省はワクチンが広く使えるよう承認作業を進める一方、殺虫剤散布などの予防対策の徹底も農家に呼びかける。 ランピースキン病にかかった牛の様子 同病は有効な治療法が未確立。アフリカで流行後、世界的に広がり、アジアでも2019年以降に拡大。韓国では、23年10月に初発生以降、全土に拡大し、農場で107件発生した。日韓間の人や物の往来に合わせて、同病ウイルスが侵入する可能性があるとして、同省は1月末には県や関係団体に、同病の注意喚起を求める通知を発出した。 症状は、発熱や泌乳量の減少など。体や粘膜に、直径1~8センチ程度で硬くて丸いコブが現れることも多い。症状が全くない場合から、回復まで数カ月以上かかる場合まである。ワクチン未接種の牛でも致死率は1~5%と低い。
吸血昆虫、飲用水、飼料で拡大
海外では発症を抑制させるワクチンが普及している。韓国では昨年11月に国内全域の飼養牛でワクチン接種を終えている。同省は国内でもワクチンが使えるよう承認作業を進めているが、現状でも特別に県の許可があれば接種可能だ。同省は、発生農場の半径20キロ圏内の農場にワクチン接種を推奨する。 主に、蚊やサシバエなどの吸血昆虫による媒介や、同病のウイルスが付いた飲用水や飼料などを介して拡大する。そのため同省は農場での対策として、殺虫剤や粘着シートなどによる害虫防除を求める。発生国で使われた飼養器具など、ウイルスが付着している可能性のあるものを持ち込まないことも訴える。 同病は届出伝染病で、豚熱といった病原性や感染力が強い家畜伝染病とは異なり、発生時に移動制限や殺処分が法的に強制されない。一方、感染牛の生乳や精液は廃棄が必要。同病に似た症状が他の牛にも出た場合は、農場全体の生乳廃棄が必要になる。感染が疑われる段階でも、他の牛からの隔離や、生乳や精液の移動自粛が求められる。(森市優)
日本農業新聞