【三大からくり人形祭り】愛知「亀崎潮干祭」・岐阜「春の高山祭」・茨城「日立さくらまつり」:山車をステージに圧巻の演技と曲芸を披露
「唐子遊び 逆立ち」は唐子2体が台を回転させ、その上でもう1体が左手1本で逆立ちしながら右手で鉦をたたくというアクロバティックな動きが見もの。現在の人形は平成に入って制作したものだが、1842(天保13)年の人形の復元で、江戸期のからくり技術の高さに驚く。 「綾(あや)渡り 桜花唐子あそび」は、唐子2体が桜の枝につるされた棒を次々と渡る芸当を見せる。体を前後にゆすり、その反動を利用して手、足を交互に引っ掛けて飛び移る仕掛けだ。バランスを取りながら最後まで無事に渡り切れるのか、観客は手に汗を握って見守る。 人形遣いのからくり人形が「船弁慶」のからくり芝居を見せるという設定の「傀儡師(かいらいし)」は、驚くほどの精巧さ。傀儡師は胸に抱えた箱の上でさらに小さな唐子人形を操った後、箱の中へと上半身を折りたたまれて舞台から退場。すると場面は変わり、義経と弁慶が現れて劇中劇が始まる。竹田近江一座の演目を再現したもので、“生きた竹田からくりの化石”ともいわれる。
岐阜「春の高山祭」
(高山市、4月14・15日) 江戸時代の古い街並みが残る飛騨高山は中部を代表する観光地。高さ8メートル、3層の絢爛豪華な屋台の行列が練り歩く高山祭にはとりわけにぎわう。祭りの起源は飛騨の大名・金森氏の時代(1585-1692年)で、1718(享保3)年に始まった屋台上でのからくり芝居が呼び物だ。 春は日枝神社の「山王祭」、秋は櫻山八幡宮(はちまんぐう)の「八幡祭」が正式名称。旧高山城下町の南北の鎮守で、それぞれの氏子町から屋台が曳き出される。八幡祭の屋台は11台あり、そのうち1台がからくり人形を乗せる。山王祭は全12台、うち屋台からくり3台が各日午前と午後に御旅所前広場で順番に芝居を奉納する。
山王祭の3演目は、目にも止まらぬ早替わりが見せ場。幕開きの「三番叟(さんばそう)」は6~9人の操作により、童子が黒い翁面をかぶる早業をはじめ、扇子をつかんでは広げて舞うなど複雑な動作を見せる。続く演目「石橋(しゃっきょう)」は、あでやかに舞う美女が一瞬にして獅子となり、踊り狂ったかと思えば再び元の姿に戻る。最後の「龍神」は唐子が運んできたつぼが割れると、中から龍神が現れて荒々しく舞う。 御旅所を埋め尽くす観客は見事なからくり演技に拍手喝采。祭りには1日に十万人もが詰めかけ、近年は警察官が多言語で通行整理に当たるほど外国人のファンも多い。