日の丸ベンチャー育む「ナスコンバレー」 海外進出も 【WBSクロス】
失われた30年を経て、日本経済はどこへ向かうのか。今回のテーマは「日の丸スタートアップ」です。アメリカのシリコンバレーのような街を、栃木県の那須につくるプロジェクトが進んでいます。その名も「ナスコンバレー」。スタートアップが育ちにくいといわれる日本ですが、その課題を打破する取り組みを追いました。 栃木・那須町は人口およそ2万4000人、北関東の避暑地です。代表的なレジャー施設が、年間来場者50万人の那須ハイランドパーク。そこにスーツケースを引いてやってきたのが辻早紀さん。三脚やタブレット端末を取り出して、アトラクションの出口に設置していきます。 アトラクションを楽しんだ客が出口に向かうと「笑顔が寄付に変わる実証実験です」(辻さん)。 タブレット端末が客の笑顔を認識しました。笑顔が一つ認識されるごとに1円が施設側から那須塩原地域の子供食堂などに寄付されます。辻さんはこの笑顔を寄付に繋げる活動を手がける社団法人「ワンスマイルファンデーション」の代表として遊園地で実証実験をしていたのです。 実験の場に遊園地を使う理由について、辻さんは「ナスコンバレーという、広大な敷地でウェルビーイングを醸成する実証実験」と話します。 実はこの遊園地、企業などに自由に実証実験できる場所を提供するナスコンバレープロジェクトの敷地にあるのです。 2021年に始まったこのナスコンバレーには、現在スタートアップなど70社が参加しています。那須ハイランドパークを含む東京ドーム175個分の敷地周辺には、道路もあれば、広大な自然、さらに学校の校舎もあります。 会員になれば、これらの私有地を行政などの特別な許可を取らずに使えるため、現在30以上の実証実験が進行中です。日本で先端技術を実験する場としては、トヨタ自動車が作るウーブン・シティがあります。こちらの参加企業は大企業が中心ですが、ナスコンバレーの参加者の多くは、小さな企業です。 「自治体も多くの実証事業を募集しているが、審査で採択された企業のみ実施できる。ナスコンバレーでは新しい取り組みと、テクノロジーの融合性があれば認められ、すごく助かっている」(辻さん)