加藤誉樹レフェリー単独インタビュー【前編】…「日本のレフェリー、すべてのバスケ関係者を代表して」
パリ五輪でレフェリーをするためにコミット
――パリ五輪レフェリー決定の瞬間は? 加藤 パリ五輪のレフェリーに選ばれるために、個人的には完全にコミットして準備したつもりです。13週におよぶ準備プログラムでは、実際に起きたケースを、判定とレフェリングの観点からレフェリー自ら英語のディスカッションを行うなど、入念な事前準備が欠かせませんでした。私は準備プログラムを受けたあと、OQT(ラトビア・ラウンド)で実際の試合をレフェリングし、その試合での審査を経て、日本に帰る飛行機の機内でパリ五輪レフェリー決定を知りました。 JBA審判グループ:候補者40名のロングリストに選ばれたときもそうでしたが、選出決定の報告を聞いた瞬間は、大変喜ばしいのと同時に安堵もしました。JBA審判グループだけではなく、日本全国のレフェリーやテーブルオフィシャル、バスケットボールに携わるすべての仲間にとって誇らしいことだったと思います。 加藤 私はプロレフェリーですので、30名に選ばれるのか、正直なところプレッシャーはありました。全国のレフェリー仲間のためにも「選ばれないといけない」という気持ちもありましたし、ファン・ブースターからは「選ばれて当然」という期待があったと思います。私が選ばれたということは、日本の様々なカテゴリーで、レフェリー・テーブルオフィシャルなど、ゲームに関わる多くの関係者との普段の取り組みが評価されて、その結果として関係者を代表して選出されたと思っています。今回のOQTからパリ五輪を通じて、日本のレフェリーたちの判定能力や取り組みが、FIBAから高く評価されていることを、改めて実感しました。 ――実際に担当する試合の割り当ては? 加藤 日本代表が属するグループの試合を日本のレフェリーが担当することはありません。例えばアメリカはバスケ王国ですし、素晴らしいレフェリーが多い国ですが、アメリカ代表がファイナルに進むかぎり、アメリカ出身のレフェリーがファイナルを担当することはないのです。レフェリーが担当する試合の通知は試合ごとで、オリンピックの場合は初日をのぞき担当試合のおよそ24時間前に、誰がどの試合を担当するかの割り当てがFIBAからアナウンスされます。クルーが決まった時点でスカウティングのミーティングを行い、試合に向けて準備をする、という流れです。 直近の数大会においては、実際の試合ではIRSオペレーターの役割もある4thレフェリーの位置づけが大きくなった印象です。ミーティングやスカウティングから参加するなど、4thレフェリーは今後のFIBA大会で重要度が増すポジションになっていくと思います。私も4thレフェリーを2試合担当しました。準備を全員で行い、コート上の3人をいかにサポートする重要な役割でした。実際にOQTでクルーを手助けできたシーンもあり、パリ五輪では難しい試合を割り当てされたことや、4thレフェリーとしても評価をもらえたことで自信になり、大きなやりがいを感じました。 (後編に続く) 日本人レフェリーの評価:大会期間中は常に評価を受ける立場です。レフェリングによっては評価が下がり、担当試合の割り当てがなくなる可能性が常にあります。いつ担当試合がきてもいいように、常に準備しておくメンタルの強さが、FIBAトップカテゴリーの大会を任されるレフェリーには求められると思います。淡々とコツコツと目の前の仕事をこなす、多くの日本人の長所とも呼べる姿勢は、FIBAのヘッド・オブ・レフェリーをはじめ、世界のレフェリーたちからも評価いただいていることも、皆さんに知っておいてほしい点です(加藤誉樹)。 加藤レフェリーは、普段は違う国で審判をしているレフェリーたちと、OQTや五輪など難しい試合でも、スムーズに試合に入るために、JBA審判グループで普段から取り組んでいるプログラムが役立っていると教えてくれました。時にはSNSなどで強い批判に晒されることも多いレフェリーたち。大きな責任が伴う重要な役割を担ってくれるおかげで、バスケが楽しめることを忘れてはいけないですね。日本バスケ界が大きく発展する中、ルールを正しく知り、レフェリーの環境も一層良くなるよう、ファン・ブースターも一緒に見守っていきたいですね(井口基史)。
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