四賀で採集の化石が世界初事例 小池伯一さんら論文発表
長野県松本市の四賀地区で採集された深海生物の化石が、世界初の発見事例と分かった。かつて海底だった地層から出た「チューブワーム」の化石が、これまで発見例がない苦灰岩(ドロマイト)に含まれていた。日本古生物学会員で松本市四賀化石館の元職員・小池伯一さん(78)=松本市新橋=が、静岡大学(静岡市)の延原尊美教授(59)らと共同でこのほど論文を発表した。 論文の筆頭執筆者を務めた延原教授によると、チューブワームの化石は発見例そのものが少ない。これまでは「アラレ石」や「方解石」から見つかっていて、それよりも深い層で形成される苦灰岩には残らないと考えられていた。今回の発見の意義を「ドロマイトでも見つかるとなれば、チューブワーム化石の発見例が今後増えるかもしれない」と語る。 小池さんによると、化石は四賀地区の十二沢支流で採集された。1000万年以上前の地層・別所層から出た長さ20センチほどの俵形の石で、10年ほど標本として化石館に保管されていた。チューブワーム化石が含まれているのを確認した小池さんが延原教授に詳細な分析を依頼し、今年春に日本古生物学会の機関誌に論文が掲載された。 チューブワームは、現在も深海の熱水噴出口などに群生する。名前の通り管状の生き物で、体内で共生する細菌を介して、噴出する水に含まれる化学物質を栄養源とする。光も食物も必要としない謎の生物の進化過程を探る上で、化石の研究は欠かせない。 小池さんは多様な生き物の化石採集で数多くの実績を持つが、チューブワームの化石には今も「わくわくする」という。「この地域で珍しい化石が見つかったことを知ってもらいたい。化石への関心が高まれば」と願っている。
市民タイムス