「ハローキティ」50周年、「カワイイ」魅力の謎と進化をたどる
2頭身で口のないキャラの誕生
1974年、自社デザインのキャラを開発するにあたり、当時すでにビーグル犬「スヌーピー」(68年にライセンス認可を受けていた)が人気だったので、20代の社内デザイナー(当時)・清水侑子が描いた、リボンを付けた2頭身のネコが採用された。口がないのは、その方が逆に何かを語りかけるのではと考えたからだという(清水美知子「『いちご新聞』にみる<ハローキティ>像の変遷/関西国際大学研究紀要、2009年)。 翌年にハローキティ商品第1号の小銭入れを発売すると予想以上の大ヒット。当初は名前がなく、「Hello!」と書いてあるだけだった。後日、清水の愛読書『鏡の国のアリス』に登場するアリスの飼い猫「キティ」から名前をもらった。以後、「マイメロディ」「キキ&ララ」「タキシードサム」「けろけろけろっぴ」など、続々と新たなキャラが生まれる。 辻があこがれていたソニーも、1978年にソニー・クリエイティブプロダクツを設立し、キャラクター・ビジネスに参入。80年代は国産キャラクターの一大ブームになっていく。 70年代末に、当初のキティ人気は下火になっていたが、80年に3代目デザイナーに就任した山口裕子が、人気復活に貢献する。テニスをしたり、テディベアを抱いたりなど、キティのポーズに動きを持たせ、トレンドに合わせてファッショナブルに演出するデザイン上の革新を敢行したのだ。 サンリオは毎年、5~10種の新たなキャラクターを生み出し、その数はこれまでに450を数えるが、大半は何年かすると店頭から消えていく。その中でキティだけが50年にわたり存在感を発揮している背景には、デザインの進化と柔軟なライセンス運用がある。 キティ10周年となる1984年3月期のサンリオの売り上げは717億円。「ファミリーコンピュータ」発売前夜の任天堂が同677億円、バンダイですら同600億円超という時代に、サンリオがいかに突出していたかが分かる 自前のデザイン力、雑貨商品にキャラをライセンスするマーケティング力に加えて、サンリオの強みは直販・フランチャイズ店舗を全国展開する営業力だ。1970~90年代、全国で200店舗の直営店を設置、デパート・量販店・小売店を入れると数千店舗に及んだ。こうした流通・小売りネットワークの拡大を通じて、90年代には「ギフト雑貨シェアはサンリオが8割」といわれるほどになった。