【公共ライドシェア】新たな地域の足に(10月7日)
公共交通機関を利用しにくい「交通空白地」解消に向け、政府は一般ドライバーが自家用車で有料送迎する「公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)」の普及を推進している。県内では、金山町が2018(平成30)年に導入したほか、南会津町が今月1日に運行を開始した。路線バスの減少やタクシードライバーの人手不足は地方共通の課題となっている。新たな「地域の足」として広がり、住民の利便性向上につながるよう期待したい。 金山町は地元のタクシー会社と連携し、年中無休で運行している。診療所や金融機関、JR会津川口駅との往復に役立てる住民が多い。JR只見線を利用した観光客の2次交通の役割も果たす。平日は午前6時台から利用可能で、会津若松市への通院に用いることもできる。 ここ数年の利用者は年間約7千人で推移している。人口減を考慮すると、1人当たりの利用頻度は高まっているという。町は住民が利用しやすくなるよう運行時間帯などの見直しを進めている。導入を検討する他の自治体の参考になるのではないか。
南会津町は、唯一のクリニックが閉院した伊南地域で導入する。南郷、舘岩への通院に利用できる他、地域内は玄関先から目的地へ運んでもらえる。須賀川市や、会津若松、いわき両市のNPO法人なども導入した。いずれも人口減少や高齢化、公共交通機関が限られる地域で、買い物や通院の手段として活用されている。住民の安心確保策としても意義深い。 国内を見ると、JA、商工会、観光協会などが運行している例もある。複数の市町村が共同で担うのも可能とされる。利用者を確保しつつ、初期投資や燃料代などの経費を抑制できる利点があり、共同での導入効果は大きい。 安全面やタクシー事業者らの経営を圧迫するとして、一部で根強い懸念も指摘されている。ただ、首都圏などの都市部と本県の事情は異なり、県内でも地域の実情はさまざまだろう。県タクシー協会関係者は「住民の足を守るため、行政と連携しながら業界として対応する必要がある」としている。過疎に悩む住民の生活を守る手だての一つとして、導入の可能性を検討してほしい。(古川雄二)