《海外富裕層を超優遇》日本人観光客を捨てることで《世界最上級のリゾート地》になったニセコに学ぶ、淘汰されないための賢すぎる「生存戦略」
今や世界中から富裕層がこぞって訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。どうやってニセコはインバウンドをものにしたのか。海外の富裕層を取り込む外国資本の戦略、日本の観光に足りていないものとは何なのか。ニセコの成功の背景を、リゾート地・富裕層ビジネス・不動産投資の知見をもつ筆者が、これらの謎をひも解く。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション *『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(高橋克英著)より抜粋してお届けする。 『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第55回 『ニセコはアフターコロナを《予見》していた!…コロナで高まった国内旅行需要、生き残れる観光地はどこだ!?』より続く
国内旅行者をどう惹きつけるか
そもそも観光・レジャーは、景気や社会情勢に大きく左右される産業だ。これからも疫病だけでなく紛争や自然災害、金融危機、経済不況は世界中で次から次へと起こり続けることになろう。 国内に限ってみても、円安だ円高だ、人口減少に人手不足など、次から次へと難問が降りかかっている。実は倒産や廃業寸前の状態だったのに、インバウンドという特需によって支えられてきた観光地・リゾート地も多く、コロナ禍は最後のきっかけに過ぎなかったともいえる。 人口減少や過疎化、基幹産業や財源がないといった地方の根本的問題は何も解決されていないことも忘れてはならない。インバウンドであれば、異国である日本そのものをコンテンツとして提供できるが、日本人観光客に対してはそうはいかない。彼らが海外旅行で得られるような特別な価値を提供できない限り、いずれ淘汰されることになる。ゆるキャラやB級グルメやご当地ナンバーが解決策ではない。
「選択と集中」の重要性
淘汰されないために、ニセコから何を学ぶべきなのか。ずばり、「選択と集中」の実践であり、言い換えれば、脱「幕の内弁当」政策だ。そして、儲かる仕組み、おカネになる仕組みとすることだ。自治体など公的セクターや寄り合い組織が運営主体や旗振り役だと、どうしてもこうした観点が欠けてしまう。地域創生や町おこしとは、突き詰めれば「儲ける」ことのはずだ。 ニセコはパウダースノーという絶対的なキラーコンテンツを最大限に生かし、「海外」「富裕層」「スキー」に絞った「選択と集中」を実践することで、おカネを生んできたのだ。我が町のキラーコンテンツは何なのか、あれもこれもではなく、一つに絞る。歴史的建造物、モニュメント、アニメ、芸能人、特産品、グルメなど、候補はいろいろあれど、やはり景観や気候を含め「自然」こそが普遍的かつ簡単に真似ができないキラーコンテンツの代表なのではないだろうか。 「消費より投資が牽引する経済社会」においては、キラーコンテンツは消費するものではなく、そこにしかない気候・自然そのものが長期投資を生むことになるのだ。 また、ターゲットとする顧客も、全方位的ではなく、富裕層、中間所得者層、マスリテール、日本人、外国人のどこをメインにするのか。キラーコンテンツとターゲット顧客を定めるだけで満足してはいけない。本当に儲かるのか、ということが最も重要だ。 観光客数が増えることや、ゆるキャラやご当地グルメがメディアに取り上げられ有名になることと、実際に儲かり、おカネを生むことは同義ではない。淘汰されつつある観光地・リゾート地の多くは、前者で満足してしまい、肝心な後者ができていない。売上は増えているが、肝心の利益は上がっていないのだ。 また、インバウンド需要や国内出張・観光需要に支えられていた国内都市型ホテルについては、一部の高級ホテルを除き、そのメインターゲットは中間所得者層である。足元のインバウンドはゼロ、出張・観光需要の本格回復は先であり、富裕層ではなく中間所得者層をメインターゲットとしている以上、安全・安心の時代、国内外ブランドホテルよりは苦戦することになろう。 最終的には、こうした都市型ホテルを所有・運営する企業の資本力・財務体力の有無によることになる。銀行から追加融資などの支援を受けられるか否かも同じように、結局は当該企業の財務内容次第ともいえる。