海自掃海艇、火災後に沈没 1人不明 国の運輸安全委が調査官派遣へ
10日午前9時45分ごろ、福岡県宗像市の大島の北約2・3キロの海上にいた海上自衛隊下関基地隊所属の掃海艇「うくしま」(艇長・山口貴博3等海佐、基準排水量510トン)から出火。海上保安庁や海自の船艇が消火に当たったが延焼を止められず、その後、転覆、沈没した。出火元とされるエンジンルームにいたとみられる古賀辰徳3等海曹(33)が行方不明となっており、海保が11日午後に潜水士による潜水捜索を実施したが、発見されていない。12日も午前中から捜索する。海自によると、火災による海自艦の沈没は2例目。 【写真まとめ】火災で煙を上げる掃海艇「うくしま」 海自は監察官をトップとする事故調査委員会を設置し出火原因などを調べる。国の運輸安全委員会も、船舶事故調査官2人を現地に派遣することを決めた。 福岡海保や海自によると、午前9時50分ごろ、うくしまから第7管区海上保安本部に「エンジンルームから火災が発生し、1人取り残されている」と無線で連絡があった。 通報を受け駆けつけた海保の船や、うくしまと一緒に訓練をしていた海自の別の掃海艇「とよしま」などが消火活動に当たったが、火の手は収まらず、出火から14時間以上たった11日午前0時5分ごろに、船体が転覆し海につかったことで鎮火。その後しばらく船首の一部が海面に出た状態だったが、転覆から約8時間後の午前8時35分ごろに沈没した。燃料は軽油で、流出は確認されているが、揮発性のため環境への大きな影響はないとみられる。 うくしまは11月中旬に始まる日米共同訓練などの準備のため、10日朝に山口県下関市の下関基地を出港し、鹿児島県の志布志港に向かっていた。出火元は船体(全長54メートル)後方のエンジンがある機関室とみられ、機関員だった古賀3等海曹と20代の男性乗組員の2人が当番で作業していた。20代の乗組員は救助され病院に搬送されたが、煙を吸うなどして軽傷。38人が乗船していたとみられ、残りの乗組員はとよしまに移り避難した。現場は水深30~40メートル程度で、海自は今後、船体の引き揚げについて検討する。 掃海艇は機雷の除去に当たる比較的小型の船艇。2003年就役のうくしまは古い掃海艇の一つで、船の磁気に反応して爆発する機雷から船体を守るため船体は木製だった。今年6~7月に年に1度の「年次検査」を受け、異常は確認されなかった。海自艦の火災による沈没は記録上、1966年に特務艇「高速13号」が沈没して以来2例目。 海自トップの斎藤聡海上幕僚長は10日夜に記者会見し「国民の皆様には大変ご心配をおかけしている」と陳謝。海自の艦艇には火災発生時に備え、消火器や、海水をホースでまくための消火栓があり、出火時は艦内の区画を区切って、空気を遮断し酸欠状態にして鎮火する手法も取られるが、斎藤氏は「通常の手順に従って消火活動を行ったと聞いている」と述べた。【佐藤緑平、松浦吉剛、島袋太輔】