国境にずらり並んだ「竜の歯」「ハリネズミ」…バルト三国で、ロシア「侵攻」への警戒感が急速に高まる
<ウクライナへの支援を理由に、NATO加盟国への攻撃の可能性をちらつかせるロシア。その侵攻に備えてリトアニアが「竜の歯」で防御を強化>
NATO加盟国であるリトアニアの国防省は、ロシアへの警戒の高まりから国境近くの橋の手前に地雷などと共に「竜の歯」を設置したと発表した。竜の歯とは第二次大戦以降、戦車などの進軍を阻止するために使われてきたコンクリート製の「防御用障害物」で、その名の通り地面からピラミッド型の巨大な歯がずらりと突き出したように見える。 【写真】国境にずらり並んだ「竜の歯」「ハリネズミ」...バルト三国で、ロシア「侵攻」への警戒感が急速に高まる 同省は9月5日のX(旧ツイッター)への投稿で、「より効果的な防衛を確保するための予防措置」として、リトアニアとロシアのカリーニングラード州をつなぐクイーンルイーズ橋の手前に設置したと説明。声明で「本日、リトアニアはパニャムネにある橋とその近くに障害物を設置した」と述べ、さらにこう続けた。「設置された障害物には地雷、ハリネズミ(鉄骨を組み合わせた対戦車障害物)や竜の歯などが含まれる」 第2次世界大戦中に多く使用された「竜の歯」は強化コンクリート製の障害物で、戦車や機械化歩兵旅団の進軍を阻止することがその目的だ。 2022年2月にロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの本格侵攻を開始して以降、ロシアとNATOの間の緊張は高まっている。ロシアはNATOがウクライナへの軍事支援や武器の供与を行うことで戦争に関与していると非難している。ロシアの当局者らは定期的に、ウクライナへの支援を理由にNATO加盟国に対する攻撃を行う可能性に言及してきた。 本誌は今回の件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。 ■7月にはラトビアも国境沿いに障害物を設置 リトアニアに先立ち、7月にはラトビアがロシアとの国境沿いにコンクリート製の対戦車障害物を設置すると発表。ラトビアの国防省は当時本誌に対して、ラトビア政府が3月5日に承認した東部国境軍事強化・移動防止計画に沿って、これらの防御用障害物を「調達し、ラトビア東部の国境地帯の近くにある臨時の保管所に輸送中」だと説明。「障害物は同計画に従って国境地帯に設置される」と述べていた。 リトアニアの国防省は5日に発表したプレスリリースの中で、「竜の歯」の設置は同国の「対人および対車両防御措置」の一環として行われるものだと述べた。同国のラウリナス・カスチュナス国防相は、「クイーンルイーズ橋はロシア連邦の所有物であるため、本日われわれが障害物を設置できるのはこの橋の手前のみだ。ここにハリネズミや竜の歯、有刺鉄線を設置することで、敵の部隊の動きを阻止することができる」と説明した。 ■リトアニア国防省「準備の時間を稼ぐことができる」 カスチュナスは、リトアニアはこの地域に金属製の梁を設置することも計画していると述べた。「川の急な勾配だけでなく地雷や竜の歯、チェコのハリネズミや有刺鉄線によっても敵の進軍を妨げることができるだろう。何が起きてもいいように準備を整えておくことが重要だ」 リトアニア国防省は、「軍事侵攻」があった場合、敵は「設置された障害物を突破するのにはるかに多くの時間やリソースを必要とするだろう。その分、我々の部隊が防御の準備をするための時間を稼ぐことができる」と述べ、さらにこう続けた。「対人および対車両防御装置は敵の歩兵と軍事装備の両方の移動効率を低下させる可能性がある」
イザベル・バンブルーゲン