“これぞ、官能”、事実をもとに綴られる小児性愛者の物語『コンセント/同意』を観て、久し振りに「映画で、お腹いっぱいになった」
【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
まだ、おなかいっぱいなので、ジャブ的なことから先に書きますが、どうしてフランス語の響きは、あんなに愛とか性を語るのに合った音をしているんでしょうね。 言葉の意味がわからなくてもエッチでロマンティックに聞こえる。 「官能」って、基本性的な表現に使われがちですが「全身の感覚に訴えかけてくる」みたいなことが根本的な意味だったはずで、まさに今作がそれでした。 シャンソンとかラプソディとかも、フランス語の曲に、なかなか敵いませんもんね。 さて、本題。 14才の少女と、小児性愛者であることを公言し、作品としてもつまびらかに発表している少女とはかなり年の離れた有名作家の…「ラブストーリー」じゃ、ないんだよなぁ…「出会ってから現在までの"出来事"」とでも、言うのでしょうか… R15+にも指定されているこの映画、エロティックな描写も度々出てくるんですが、全然、びっくりするぐらい興奮しません。 14才(を、演じている女優さん。本当は2000年生まれだそうなので、撮影時20才過ぎぐらいなはず)の、裸とかベッドシーンが死ぬほど出てきます。 でも、改めて言いますが、まるで興奮しません。普通というと語弊があるかもしれませんが、例えばレイプのシーンとか、観ている側は、罪悪感と背徳感を同時に感じてしまったりしがちだと思うのですが、画はとても美しく艶めかしいのに、そういう感情が湧いてこない。 “告発”的な意味を孕んだ作品なので、映像としてではなく、受け取る側の感情に対して、かなり「グロい」描写が続きます。少なくとも筆者は、感情移入しすぎて「おなかいっぱい」になり、吐きそうでした。 映画というエンターテイメントとしても、道徳の教材としても、最高の仕上がりだったのではないでしょうか。なんか、いつもは「是非劇場へ!」みたいに締めますが、今回に関しては「胃もたれするけど、絶対に観るべき」で、締めたいと思います。 法律って「自分や、身近な人が“されたらイヤなこと”を、多数決して、皆で守る約束」みたいなものだと、理解していて、この映画を見て一番感じたのは「未成年と保護者と、定められた関係の中で"どこまで本人の意志を尊重するか"と"保護者(や、大人)がどこまで責任を取る"のか」が、根本的な問題にあったように思えます。 「◯才までは、自分で判断できない」って、各国、皆で、約束したんだから「子供の意志を尊重した」なんつって、育児や教育を放棄する親はダメだよ。 こういうテーマを全身で受け止める、まさに「官能的な作品」だったと、思います。 盛り沢山だけど、端から端まで、芯を食う表現が続く「胸焼けするような映画」ですが、15才以上の皆さん、是非劇場で、感じて下さい。