[MOM4747]駒澤大高FW岸本空(3年)_みんなが待っていたストライカーの覚醒。途中出場から土壇場での決勝点でチームを全国に導く!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [6.15 インターハイ東京都予選準決勝 駒澤大高 1-0 國學院久我山高 AGFフィールド] 【写真】「マジで美人」「可愛すぎてカード出る」現地観戦した女子アナに称賛集まる オレがやるしかないと思っていた。0-0。残された時間は5分ぐらい。主役になるにはもってこいの状況だ。自分が投入された理由はわかっている。苦しい試合に決着を付けるゴールを奪う。そのためにひたすら努力を積み重ねてきたのだから。 「もうメチャクチャ嬉しかったですね。後半の終盤あたりのゴールだったので、そこでチーム全体に良い流れを持ち込めましたし、相手にとっても苦しい時間帯での1点だったと思うので、率直に嬉しかったです」。 ジョーカー起用を受け入れて前を向き続けた、献身のストライカー。駒澤大高のナンバー11。FW岸本空(3年=横河武蔵野FC U-15出身)は土壇場でねじ込んだ自らのゴールで、全国大会へと繋がる扉を力強くこじ開けてみせた。 「途中出場がここ3試合は続いていて、悔しさはありました」。岸本は率直な思いをそう明かす。インターハイ予選も2次トーナメントに入ると、メンバー表の“交代要員”の欄に11番の名前が書き込まれる機会が増えていく。 チームが大一番と位置付けて臨んだ、昨年度の高校選手権全国4強の堀越高と対峙した2回戦。岸本がピッチに登場したのは、1点をリードした後半36分から。任されたゲームクローズの役割を全うしたストライカーに、シュートを打つチャンスは訪れなかった。 もちろん自身の立ち位置に納得しているはずはない。ただ、同時にチームで戦う気持ちはブラしたくない。「去年は先輩方に付いていく感じだったんですけど、最高学年になって自覚や責任が出てきたので、ベンチでもスタメンでも、自分が先頭に立ってチームを良い形で動かしていきたいなと思っていました。あとは途中から試合に出る時に、交代で下がってきた選手に『絶対やってこいよ』と言われたり、そういう励ましの声や鼓舞してくれる声が多くて、そこにはだいぶ支えられたかなと思います」。チームメイトたちも岸本の気持ちはよくわかっていた。 勝てば全国出場が決まる準決勝。國學院久我山高との一戦は拮抗した展開に。スコアレスで迎えた後半16分。アップエリアにいた11番に声が掛かる。「久我山さんは結構回してきて、その中で結構押し込まれる展開が続いていたので、『前線でタメを作る時間が必要だ』と亀田先生がおっしゃっていて、その中で自分の強みのフィジカルを生かして、攻撃の起点になれればと思いました」。自分の果たすべき役割を整理して、緑の芝生へと駆け出していく。 試合も終盤に差し掛かっていた37分。駒澤大高は左サイドでFKを得る。キッカーのMF矢島礼偉(3年)が蹴り込んだボールはファーへ届くと、岸本はゴール前の状況を冷静に見極める。「相手のセンターバックの2人は結構身長が大きくて、普通に競っても勝てるかもしれないですけど、そんなに良い状態でヘディングはできないと思ったので、折り返した時に相手の背後を取って、視野から外れるように動きました」。 FW岩井優太(2年)の折り返しが、目の前に飛んでくる。夢中で頭に当てたボールがゴールネットを揺らしたのを確認すると、気付けば仲間が待つピッチサイドへと全速力で走り出していた。 「自分たちは『全員で勝つ』ということを掲げていて、どんな形で出てもそれぞれの選手が最高の準備をしてきてくれていると思うので、スタートでは出ていなかった空も、良い準備をしてくれたからこそ、最後に決められたのかなと思っています」(MF寺尾帆高)「空とは仲が良いんですけど、ここまで全然ゴールを決められなかったのに、今日はきっちり決めてくれたので、自分は信じていましたし、やっぱり最後に空がやってくれたなと」(DF嶋田結)「『ここで爆発させて来い』ということで岸本を送り出して、気合は入っていたと思うので、やってくれてメチャメチャ嬉しいです。このレベルになってくると3年生の力が必要だなということは改めて感じました」(亀田雄人監督)。 みんなが待ち望んでいた、岸本の覚醒。「折り返して来たボールを意地でもねじ込んでやろうという気持ちが強かったです。みんなのおかげですね」。悩める3年生ストライカーの決勝ゴールで、駒澤大高は2014年以来となる、9大会ぶりの夏の全国大会出場を勝ち獲る結果となった。 自分の特徴と課題はしっかりと把握している。「今日の試合でも出せましたけど、ヘディングは持ち味にしていますし、相手が自分より大きかったとしても、タイミングが合えば勝てると思います。あとはフィジカルを生かして、無理やりにでもターンして、シュートを打つのも持ち味なのかなと思います」。 「去年は筋トレをメチャメチャしていました。もともと身体は大きい方だったんですけど、自分の長所を磨くという中で、もっと筋肉を付けなくてはなと。ただ、アジリティとかスピードは全然ないので(笑)、そこをもっと磨いていければなと思います」。 自分たちの力で掴んだ全国大会。岸本も晴れの舞台へ想いを馳せる。「全国だともっと暑くなったり、タフなゲームが多くなってきますし、相手もより強くなってくる中で、1つの隙でもやられると思うので、今以上にもっと課題を改善していって、最高のコンディションで臨みたいと思います」。 置かれた立場がスタメンでも、ベンチからでも、やるべきことは変わらない。与えられた時間で全力を尽くし、誰よりも身体を張り、勝利に結び付くゴールを奪う。愚直に戦う献身のストライカー。きっと真夏のインターハイのピッチでも、岸本の力が必要とされる時は、必ずやってくる。 (取材・文 土屋雅史)
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