上に文句を言うなら結果を出してから【里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール!】第6回
■チームプレーか、それとも個人の成績か? ――今、里崎さんが口にしたように野球というスポーツは団体競技でありながら、投手と打者の個人競技の側面もあります。同時に、プロ野球の場合はチームの一員でありながら、個人事業主でもあります。「チームプレー」という考えと「個人成績」というものは矛盾しないものなのか? この点はどうですか? 里崎 やっぱり、それはただのきれいごとですよ。「チームプレー」って、何それ? 野球は各ポジションの動きが決まっているんです。例えば、ノーアウトランナー一塁でサードゴロを打ちました。サードはボールを取ってセカンドに投げる。セカンドはセカンドベースに、ファーストはファーストベースに入る。キャッチャーはファーストのカバーに行く......。基本的な動きはすべて決まっているんですから。 五十嵐 でも、それこそがチームプレーなんじゃないの? 里崎 それはチームプレーではなくて、ただ自分の役割をこなしているだけでしょ。その点がさっき言ったサッカーやバスケと、野球の違うところだと思いますよ。よく言われる「送りバント」とか「右打ち」というのも、僕に言わせれば「自己犠牲」ではなく、「ただ単にヒットを打つ能力がないから」という部分がとても大きいと思いますね。それが自分の意思であろうと、監督からのサインであろうと、ヒットを打つ確率が低いからバントをしただけで、それは「自己犠牲」ではなく、単に「自分の仕事をした」というだけのことだから。 五十嵐 確かに、そう言われればそうかもしれないけど、だからといって誰も彼もが好き勝手にやっていたら、組織としては成り立たないですよ。プロ選手の場合は、サトさんの言うように「監督から嫌われても結果を出せばいい」とか、「本物の一流ならば自分のやりたいようにすればいい」とも言えるかもしれないけど、この考え方は一般社会ではなかなか難しいと思いますけどね。 里崎 そう、僕が言ったことは間違いなく、僕たちがプロスポーツの世界で生きているから言えること。これが会社だったら、能力があっても上司から嫌われてしまえば使ってもらえなくなったり、異動や出向を命じられて機会を失ってしまったりすることもあるはずだから。