大炎上の復活登板となった松坂大輔に突きつけられた引退危機
松坂は、しっかりと記者団の質問に答えた。 「緊張はありました。望んだ結果ではなかったけれど、よくても悪くても投げられたということがよかった。ただ、この結果と内容を受け止めて、これからどうするかを考えなければならない」 監督の言葉をどう受け止めたか?と聞かれ、「監督の話を受け止めて、しっかりと前を向かねばならないと思い直しました。いきなりは無理ですが、自分でこの結果を受けとめ、消化するには、時間がかかりますが、来年に向けて、いちから筑後(ファームの本拠地)で頑張りたいと思います」と再起への決意を口にした。 残り1年契約が残っているため“やめろ”とは言われない立場だが目の前に立ちはだかる厳しい現実がある。 この日、現地で取材した評論家の池田親興さんは、「緊張と焦りの心理状態も作用したと思う。本来、上半身が横回りするフォームだが、下半身とのバランスが崩れ、リリースポイントがあれだけバラバラだと、コントロールを安定させることは難しい。元々、立ち上がりが悪いピッチャーではあるが、見ていて悲しくなってしまった。ストレートを動かすのか、綺麗なフォーシームにしたいのか。それとも、変化球と制球で勝負したいのか。まだ契約が1年残っている彼が、今後どうしたいのか、どういう方向に向かっていきたいのかが、まったく見えなかった。私はファームの登板から見ているが、まだ体が万全でないのならば、来季の復活も不透明だろう」という厳しい評価を口にした。。 往年の松坂の姿を見ることは、おそらくもう不可能で「新しい松坂のスタイルをどう確立できるか」(前述の池田さん)が復活の鍵になるのだろう。しかし、何もしないまま2年が過ぎた。もう多くの時間は残されていない。今秋、来春のキャンプ、オープン戦の過程で、1軍枠に残るだけの結果と内容を見せなければならない。もしその過程で、再度どこかを痛め、また一からやり直しとなると、チームの戦力となる時間は限られる。そうなると、3年で12億円とも15億円とも言われる巨額な契約の終わりに、松坂は引退という決断を迫られることになる。来年、待ち受けている引退の危機を松坂はどう乗り越えるのか。 散々な内容しか残せずに、マウンドを降りるとき、場内からは、激励の大きな拍手が起きた。 「敵味方関係なく送ってくれた声援はありがたかったです」 プロ野球のファンは松坂大輔の復活を待ち望んでいる。