「交通事故被害者遺族」が法相に要望書を提出 過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の改正を求める
1月23日、「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」の代表理事の小沢樹里さんと副代表の松永拓也さんは、危険運転致死傷罪の改正などを求める要望書を小泉龍司法務大臣に提出した。
「過失運転致死傷罪」の量刑引き上げ、「危険運転致死傷罪」の基準明確化などを要望
要望書の提出後に行われた記者会見では、団体の代表顧問の高橋正人弁護士が、要望の趣旨を解説した。 一つ目の要望は「過失運転致死傷罪の法定刑の引き上げ」について。 現在の法律では、「危険運転致死傷罪」の法定刑は被害者が負傷した場合で15年以下の懲役、死亡した場合は1年以上20年以下の懲役。一方で、「過失運転致死傷罪」の法定刑は負傷と死亡の差を問わず、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金となっている。 提出された要望書では、実際に起きている事故のなかには、危険性や悪質性は危険運転と変わらないが過失運転致死傷罪しか適用されない事例が多いことを指摘。すぐに危険運転致死傷罪の構成要件を変えるのは難しいことを認めながらも、現在の過失運転致死傷罪の量刑は国民の規範意識とかけ離れているとして、法的な抑止力のためにまずは過失運転致死傷罪の法定刑を引き上げることが重要だと主張されている。 二つ目の要望は、「危険運転致死傷罪の構成要件の改正」について。 「危険運転致死傷罪について起訴することは困難であり、構成要件と現実の乖離が明らかになってきました。本来であればもっと簡単な捜査ができ、他方、法律を守る私たちにも容易に理解できるような書きぶりすべきです。」(原文ママ、要望書から)。 高橋弁護士は、現行の危険運転致死傷罪の条文では「危険運転」の定義が曖昧になっているために、同じ事故であっても裁判所によって判断が異なってしまう問題を指摘。「血中や呼気のアルコール濃度が一定以上である場合」「制限速度の2倍以上(高速道路では1・5倍以上)の速度で走行していた場合」「故意に赤信号で交差点に入った場合」など、「危険運転」が成立する条件(構成要件)を誰でも分かるような具体的かつ単純なものに変更すべきと主張。 また、高橋弁護士は「条文で基準を明確化することは罪刑法定主義に沿い、加害者の人権保護にもつながる」と論じた。 三つ目の要望は「制御困難高速度類型の事案に対して検察官が裁判に挑む姿勢」について。 現在の高裁(東京高裁および名古屋高裁)の裁判例では、直線道路である限り、時速120kmを超える高速で走行していたとしても、衝突の瞬間まで車線に沿って並行していれば「運転を制御できていた」と判断され、危険運転致死傷罪に当たらないとされている。 要望書は、あまりに高速度で運転している場合には、歩行者や他車に衝突する直前で危険を認知したり、とっさにブレーキを踏んで車体を制御したりすることが困難であるという問題を指摘。 「直線道路における同類型の危険運転致死傷罪については、高裁の判断が示されているだけで、最高裁の判断が示されたことがありません。理由は、裁判所に責任があるのではなく、高裁の敗訴判決で諦めてしまい最高裁まで上告しない検察官に責任があります。」(要望書から)。