「交通事故被害者遺族」が法相に要望書を提出 過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪の改正を求める
自動運転車の「免責規定」に対する懸念も表明
会見では、AIを活用した自動運転技術を発展させるという目的から、自動運転車が事故を起こした際にも自動車メーカー等の刑事責任を問わない「免責規定」の導入を検討しているデジタル庁に対する懸念も表明された。 高橋弁護士は、自動運転車が事故を起こした場合はどこにどのような欠陥があったかをメーカーに開示させる代わりに、メーカーの刑事責任は問わず製造物責任法も適用されないという法律を作る方向に議論が進んでいる、と主張。 小沢さんは「被害者としては、事故が起きたときには“なぜこのような事故が起きたのだろう”と知りたくなる。しかし、デジタル庁は、自動運転の事故については裁判も起こさないような法律を作ろうとしている。真実を知るために裁判を起こしたくても、告訴や告発をする権利が被害者から奪われてしまう」と訴えた。 松永さんも「技術の発展を否定しているわけではない」としたうえで、事故の責任を問われる相手がいなくなるような法律が制定されることに疑問を呈した。 現状では法務省の管轄外であるため、今回の要望書には自動運転車に関する記載は含まれていない。後日改めて、デジタル庁に要望書が提出される見込みだ。
交通事故の被害者や遺族を支援する「関東交通犯罪遺族の会」
一般社団法人「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」は2012年(平成24年)7月8日、複数の交通犯罪の遺族が集まって設立。 小沢さんは2008年(平成20年)に熊谷市の県道で起こった飲酒運転の暴走車による事故のため義理の両親を亡くし、義理の弟と妹も重体や重傷を負い障害を抱えることになった。 松永さんは2019年(令和元年)に起こった東池袋自動車暴走死傷事故で妻と娘を亡くした。 団体の目的は、「交通事故を1件でもなくし、被害者や遺族が増えない世の中」を目指して法整備を働きかけることや、遺族同士の助け合いと支援の輪を広げていくこと(団体HPおよび警察庁HPから)。他の交通犯罪遺族への支援、交通犯罪撲滅のための講演、マスメディアを通じた発信、各方面への要望活動などを行う。 団体のHPでは、交通事故の被害者や遺族のための「弁護士の探し方」や「裁判の流れ」を紹介している。東京および関東各県の警察と被害者支援センターの連絡先やHPを集めた「犯罪被害者支援窓口一覧」も掲載。また、「大切な家族を理不尽に奪われた」被害者としての立場からの意見を強調するため、同団体は交通事故ではなく「交通犯罪」という表現を用いている。 会見にて、小沢さんは「法律が作られたときに比べて、現在では車の性能も道路の状態も変わっている。自動車運転処罰法そのものを見直して、今の世に適切な法律を作ってほしい」、松永さんは「加害者に対して厳罰を求めているのではなく、事故の内容に見合う適切な刑罰が与えられていない現状を変えてほしい」と、それぞれに訴えた。 両者とも、交通事故に関連する法律が、被害者たちを含めた一般人の感覚からかけ離れたものになっていることを問題視している。
弁護士JP編集部