ねぐせ。、Cody・Lee(李)と祝ったリーガルリリー結成10周年記念公演「ロックという宝物の中に今日一日を入れたい」
すっかりフロアの空気が温まったところに現れたリーガルリリー。冒頭からたかはしが出すフィードバックに大きな歓声が上がり、この対バンのマインドを表現するような「若者たち」が鳴らされる。晴れやかな孤高とでも言うべきバンドアンサンブルは彼女たちならではのものだ。青い季節のムードは「17」の軽快なビートに接続。タイトなリズム隊、たかはしの乾いたカッティングとトレブリーなソロが愛らしさのある曲にフックをつけていく。3ピースの音で他の誰でもないアイデンティティを証明していく今のリーガルリリーの強さがオーディエンスを引き込んでいく。 ピックを挟んだ右手を挙げ、「リーガルリリーです!」と、たかはしが挨拶したと同時に三つの楽器が畳み掛けてくるイントロに大きな歓声が上がる。「東京」だ。全身を使ってグルーヴの核を生み出している海はさらに自由になった印象だし、サポートのUrara(ds)の緩急の効いたドラミングは現在のバンドの推進力だ。続く「ハイキ」では後ろ乗りのダンスチューンっぽいリズムが新鮮。開かれた風通しの良さと、この一瞬に賭ける集中力の両方が聴き手である私たちの感性に挑んでくる。プレイヤーとしての3人それぞれの個性も視覚・聴覚にはっきり刻まれた。 Cody・Lee(李)とねぐせ。に感謝を述べ、「リーガルリリー 10th Anniversary TOUR、今日から始まります」と述べたたかはしの口調はまるで宣誓のようで、フロアの拍手にもお祝いのニュアンスが籠る。そこに新たなリスナーもつかんだ新曲「キラキラの灰」をセットしたのもハマりがいい。ライブで聴くと、ヴァースでの地声の歌メロがより新鮮に感じられた。また、海のコーラスも相まって、ガール版ジュブナイル(語義矛盾だが)にワクワクが止まらないのだった。そのマインドで“ばかばっかのせんじょうにギターを1つ持って”と、歌い始める「ジョニー」につながる清々しさは破格だ。死生観が綴られた曲ではあるが、どんな世界でも愛し合って生きることは絶対譲らないだろう。それは表現の仕方こそ違っても、この日の3バンドに共通していたと思う。 さらに、コードワークとビートがチェイスするスピーディな「60W」が新鮮なアンサンブルを実感させ、歌詞に宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と、藤原新也の「メメント・モリ」を想起させる部分も交錯して、イメージはどこまでも拡張して行った。さらにアナウンスもなく突如として弾き語りから始まった未発表曲「ムーンライトリバース」と、バンドの今を表現した後、海の重く深い低音フレーズが地鳴りを起こす「1997」に思わず叫び声が上がる。生の捉え方が超越的でもあり、時に生々しいたかはしの個性が広く共感されることで言葉にならない信頼感がフロアに広がっていた。すごいパワーだ。 「よし!」と、意を決した様子で新曲を初めて演奏するというたかはし。曲名は「天きりん」といい、あとでわかることなのだが、ニュー・アルバム『kirin』の一曲目となるナンバーだ。オルタナティヴなギターロックのダイナミズムをたっぷり含み、歌詞には“下北沢ざわざわ”など、バンド活動のリアルな原点も見てとれたが、しっかりと歌詞カードを見ながら早く聴いてみたい。初披露に達成感があったのか、両手を挙げるたかはしをはじめ、気持ちが加速した3人が鳴らす「リッケンバッカー」の出だしに絶叫で反応する人も。“おんがくよ、人を生かせ”のロングトーンがどこまでも伸びていくと同時にこちらの心の震えが高まる。バンドがタフになるにつれて、この曲がスタンダードなロックナンバーに育ったことを改めて認識した演奏でもあった。 やまないアンコールに応えて再登場したメンバーは嬉しさが溢れ出ている。たくさんの告知をする海も嬉しそうでたまらない。それもそのはず、2年半ぶりのフルアルバム、初の台湾でのワンマンライブ、東京でのツアーの追加公演という走り続ける今のバンドを映したインフォメーションだったのだから。 「ロックという宝物の中に今日一日を入れたいと思いました。皆さんも見つかるといいなと思います」と、たかはし。さらにこの日は彼女が高校生の頃、時間を持て余していた頃にコードを爪弾いていたというKANA-BOONの「眠れぬ森の君のため」をねぐせ。のりょたちと共演し、バンドを始めた頃を思い出させる部分が切なくも瑞々しかった。対バンの意義を見せてくれたあと、ラストは「はしるこども」で、心のままに躍動。早くもワンマンツアー「わたしたち、はだしたち」に駆け出すリーガルリリーを観た思いがした。 Text:石角由香 <公演情報> リーガルリリー 10th Anniversary TOUR 2024~海の日~ “ロックンロールクロー” 2024年7月5日 Zepp DiverCity 【セットリスト】 <ねぐせ。> 01. 愛してみてよ減るもんじゃないし 02. 死なない為の音楽よ 03. スーパー愛したい 04. あの娘の胸に飛びこんで! 05. めちゃくちゃ好きな人を愛すように世界を愛して! 06. 恋と怪獣 07. ずっと好きだから 08. グッドな音楽を 09. あの娘の胸に飛びこんで! <Cody・Lee(李)> 01. 涙を隠して(Boys Don’t Cry) 02. 異星人と熱帯夜 03. 烏托邦 04. DANCE扁桃体 05. 世田谷代田 06. 生活 07. 初恋・愛情・好き・ラヴ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!! <リーガルリリー> 01. 若者たち 02. 17 03. 東京 04. ハイキ 05. キラキラの灰 06. ジョニー 07. 60W 08. ムーンライトリバース 09. 1997 10. 天きりん 11. リッケンバッカー EN1. 眠れぬ森の君のため (KANA-BOON) EN2. はしるこども <リリース情報> フル・アルバム『kirin』 8月28日(水)リリース 【収録曲】 01. 天きりん 02. キラキラの灰 03. 17 04. ハイキ 05. 春が嫌い 06. 夏のエディ 07. me mori 08. ムーンライトリバース 09. 海月星 10. 60W 11. 地球でつかまえて 12. ますように 13. sayouna ra asa!(Bonus Track / 初回生産限定盤のみ) 初回限定盤Blu-ray 「リーガルリリー YAON 2023」 Live at 日比谷野外大音楽堂 2023. 7. 2 <ライブ情報> リーガルリリー 10th Anniversary TOUR 2024 “わたしたち、はだしたち” 7月20日(土) GORILLA HALL OSAKA 7月21日(日) 名古屋BOTTOM LINE 8月31日(土) 高松DIME 9月7日(土) 札幌cube garden 9月14日(土) 広島CLUB QUATTRO 9月15日(日) 福岡DRUM Be-1 9月21日(土) 仙台darwin 9月22日(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE 9月28日(土) 金沢AZ 9月29日(日) 京都磔磔 10月16日(水) 東京都 LIQUIDROOM Regallily 10th Anniversary TOUR 2024 in Taipei 2024年10月11日(金) 台湾 台北THE WALL Live House
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