強風の平昌五輪で渡部暁斗の金メダル獲得の条件とは?
さあ勝負のときが迫ってきた。 渡部が金メダルを獲得するための条件は何なのだろう。 「ジャンプさえ何とかなれば、ですね。いつも強気で飛びますよ」 前半のジャンプで上位につけることがメダルへの道だとわかっている。 鉄則は、前半のジャンプで限りなく首位に近づけて余裕を持って後半のクロスカントリーの10キロに挑んでいくパターンである。 だが、今大会は強風と気まぐれな風向きが勝敗を左右している。いい風に恵まれるかどうか、の問題もある。加えてライバルも多い。 五輪2連覇をめざすフレンツェル、ルゼック、リースルらのドイツ勢は団体戦では金メダル確実といわれる選手層の厚さを誇り、シュミットやグラーバクとベテランのモアンなどクロスカントリーで実力のある強豪ノルウェーも要マーク。さらに有能な若手を揃えて10年計画で選手育成してきたフィンランドのヘロラやヒルボネンなどの勢いも見逃せない。ライバルは10名近くにもなる計算だ。 ジャンプで大きなリードを奪うことができず、クロスカントリーで集団に埋もれるような団子レースの展開になってくると、最後の直線勝負などでスプリント能力が試されることになるが、そこは欧州のライバル達に一日の長がありそう。 さらに懸念されるのは渡部のスタミナだろう。国内での調整を優先させてW杯白馬大会を欠場していた欧州勢はスタミナを温存している状態だ。 ただ人工雪で固められた冷えた平昌の五輪コースでは、日本チームのワックス技術が威力を発揮しそうだ。 「後半の走りは滑るスキーをサービスマンが作ってくれますから、信頼しています」 日本の仙台にあるガリウム社が平昌スペシャルを作ってチームに授けた。これはソチでも滑った特別なワックス、その開発技術を基軸に平昌のクロカンコースで渡部を勝たせるワックスに他ならない。 それだけにもしジャンプでリードを奪われていても、トップとのタイム差が1分以内であれば、滑るスキーの効果もあり、クロスカントリーでの逆転も可能。いずれにしろジャンプで大きくリードすることが金メダルの条件だろう。 平昌五輪では、渡部の表情にも注目してもらいたい。微笑みをたたえて走っているのがよくわかる。選手同士の競り合いを心の底からうれしく感じながら走っているのだ。本当にスキーが好きで、スキーが楽しくてたまらないのだろう。そういう精神を持つ選手には勝利が駆け寄ってくる。 (文責・岩瀬孝文/国際スキージャーナリスト)