映像で核実験疑似体験 復興の歩み伝えるAR 長崎原爆資料館の展示リニューアル
長崎市は18日、2026年度に予定する長崎原爆資料館(平野町)の展示リニューアルに向けた基本設計案を公表した。核兵器と戦争に関するコーナーを大幅に見直し、世界で2千回以上繰り返されてきた核実験の脅威を映像で疑似体験できる仕掛けや、復興の歩みをジオラマと拡張現実(AR)で学ぶ内容などを盛り込んだ。原爆投下に至る歴史は第1、2次世界大戦を軸に戦争へ向かう日本と国際社会の動きをまとめる。 市は今年4月、リニューアルの方向性をまとめた基本計画を公表。6~8月に小学生や大学生、一般公募者を対象に開いたワークショップで出た意見も踏まえ、基本設計案をまとめた。 核兵器と戦争に関する「Cコーナー」では、小部屋に入ると、内部で流れる映像を見ながら核実験に立ち会う疑似体験ができ、ジオラマとARで原爆投下からの復興の歩みを知る展示などを設ける。戦後の原水爆禁止運動から広がった長崎の反核・平和運動の歴史についても新たにグラフィックや写真で紹介する。 日本の加害責任を含む歴史展示を巡っては、市民団体が要望活動をするなど議論が交わされてきた。「二つの世界大戦」を軸に、戦争へ向かう日本と国際社会の動きをパネルで紹介する。市は「被害と加害の両方の側面」を伝える構えだ。 常設展入り口付近では被爆前後の状況を写真で比較できるようにする。出口付近では来館者がメッセージを残し、平和の思いを共有するスペースを造る。 同日、同館運営審議会が同館で開かれ、設計案を協議。委員からは「南京大虐殺など日本軍の戦争の実態はきちんと記述することが必要」との意見や「ジェンダーを意識した展示にしてほしい」「被爆体験者の実態を踏まえ、内部被ばくの問題についても展示を」などの注文が出た。 市は審議会での協議を踏まえ、来年3月までに基本設計をまとめ、25年度に具体的な実施設計を策定する。