“負の遺産”は相続を放棄することもできるが…「相続対策」を始める前に必ず知っておきたい大事なこと【税理士が解説】
誰かが亡くなったときに発生する「相続」。生前のうちに準備しておかないと、「想像もしていなかったようなトラブルに発展して、家族がバラバラになってしまうことさえある」と税理士の北井雄大氏は言います。北井氏の著書『相続はディナーのように ”相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、相続対策を始めるうえで知っておきたいことを見ていきましょう。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)> 2023.02.07
【登場人物】 相続ソムリエ:悩める家族に相続のアドバイスを贈る、相続のプロフェッショナル 潤一郎(80歳):春樹の父親 小百合(76歳):潤一郎の妻 春樹(52歳):潤一郎・小百合の長男。妹が1人いる 綾子(50歳):春樹の妻 桜(23歳):春樹・綾子の娘。潤一郎・小百合の孫
相続対策で最初に知っておくべき「5つのポイント」
相続ソムリエ:相続で最初に押さえておくべきポイントを5つご紹介しましょう。相続対策をスタートするときは、この5つに目を向けてみるとアクションしやすくなりますよ。 1つ目は「財産と債務の把握」 です。配偶者や子に相続される財産と債務を書き出し、明確に把握しましょう。ポイントは、預貯金や不動産などといったプラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も忘れずに洗い出すことです。 綾子:もしも被相続人に借金があったら、どうなるの? 相続人が返済しないといけないのかしら……? 相続ソムリエ:相続放棄をすれば、相続人は借金を返済する必要がなくなります。ただし、相続放棄すると、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産を相続する権利も放棄することになります。 綾子:なるほど。プラスの財産を相続したいなら、マイナスの財産もセットでもらわないといけないのね。 相続ソムリエ:その通りです。プラスの財産とマイナスの財産はセットで相続されます。プラスの財産とマイナスの財産、 すべての相続財産を相続することを「単純承認」、どちらも相続しないことを「相続放棄」と呼びます。 綾子:だから 「財産と債務の把握」 なんですね。プラスの財産とマイナスの財産を見比べて、どちらが大きいかがわかれば、相続すべきか相続放棄すべきかがわかるもの。 相続放棄の申し立て期限は、相続開始から「3カ月以内」 春樹:でも、もしも親がこっそり借金していたら、大変じゃないか? 「預貯金や不動産が自分のものになる!」 と喜んでいたら、マイナスの財産のほうが大きかったりして……。 潤一郎:そういった意味でも、生前のうちに財産と債務を把握して、家族に開示しておく必要があるということだな。ちなみに、相続放棄するときはどんな手続きが必要になるのかな? 相続ソムリエ:相続放棄を希望する場合には、相続人が家庭裁判所に 「相続放棄」 を申し立てる必要があります。この手続きは、相続開始から3カ月以内に行わなければなりません。この期限を過ぎると、自動的に 「単純承認」 となります。 綾子:3カ月!? 相続放棄する場合は、すぐに意思決定しないといけないということね……。「借金があるかどうか」 から確認している余裕はなさそうだわ。 春樹:「単純承認」 と 「相続放棄」 は、相続人全員が同じじゃないといけないのでしょうか? 兄は単純承認、妹は相続放棄のようなパターンも認められるのだろうか? 相続ソムリエ:そのパターンもOKですよ。ただし、あとになって変更することはできませんので、注意してください。 桜:「全部相続する」 か 「全部相続しない」 かだなんて、けっこう極端な決断を迫られるんですね。
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