「プッチンプリン出荷停止」はなぜ起きた? “ベンダーのせい”にできない根深き問題
「ベンダーの能力不足」という単純な問題ではない
プッチンプリン問題の一連の騒動を振り返ってみると、興味深い事実が浮かび上がってくる。多くの人は、この問題の原因をベンダーの能力不足や、企業のIT投資に対する姿勢の問題だと捉えているようだ。しかし、実際はそれほど単純な話ではない。日本企業特有の商習慣や文化が、グローバルスタンダードのERPとの間に大きな隔たりを生んでいるというのが、問題の本質にある。 実はこれはERPに限った話ではない。グローバルスタンダードのSaaSの導入も、ベストプラクティスである業務フローを取り入れられるというのが1つのメリットだ。しかし日本の企業文化に合わせようとすれば、どうしてもカスタマイズが必要になり、ベストプラクティスからは離れていってしまう。なかなか難しいジレンマだ。 日本企業の強みに、現場主導の「カイゼン活動」がある。これは、日本の製造業に世界的な競争力を持たせた源泉だ。しかしそれは同時に、各社のオペレーションがバラバラになることを意味する。これはある意味、ITによる標準化とは相いれない側面があるのかもしれない。 とはいえ、2027年までに各社はSAPのバージョンアップを控えている以上、同じような問題が今後も頻発するだろう。ITベンダーも企業も、解決策を模索し続けなければならない。 ITの導入と、日本企業の文化や商習慣の間には、まだ大きなギャップがある。しかし、日本企業がDXを進め、国際競争力を維持するためには、ERPをはじめとするITシステムのカスタマイズとの折り合いをつけていかなければならないだろう。プッチンプリン問題は、その難しさを浮き彫りにしたといえそうだ。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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