名人初防衛を果たすもまだまだ激戦続きの藤井聡太、5月の対局を振り返る
挑戦者の様々な作戦に苦しめられたものの、名人戦は4勝1敗で初防衛。激戦になっている叡王戦はカド番をしのぎ、最終局へともつれ込んだ。 ※対局予定棋士の名前の後の()内は藤井から見た過去の対戦成績。 【写真を見る】叡王、棋聖、王位の防衛にのぞむ藤井聡太 5月2日に第9期叡王戦五番勝負第3局で伊藤匠七段と対戦。角換わり腰掛け銀から先手は2九飛・4八金型、後手は8二飛・5二金型の新型対旧型の対抗となる。うまく手を作り順調にリードを奪うが、終盤で伊藤の猛攻の前に受けを誤り逆転。一分将棋の中で勝負手を連発していくが、伊藤にかわしきられて敗戦。1勝2敗と追い詰められた。 5月8、9日に第82期名人戦七番勝負第3局で豊島将之九段と対戦。豊島の雁木に藤井は積極的に棒銀で攻めていく。銀をさばいてリードを奪うと、その後は着実に差を広げて、最後は大差を付けて投了に追い込んだ。これで3連勝と防衛まであと1勝。 5月18、19日に名人戦第4局で豊島九段と対戦。豊島が序盤から趣向を凝らし、先後を入れ替えた形の横歩取りから、手探りの将棋となった。形勢は難しいながら実戦的にまとめにくい将棋になり、途中からは駒損で指しにくい将棋となる。その後も差は埋まらず、珍しく完敗となった。これで七番勝負は3勝1敗に。 5月26、27日に名人戦第5局で豊島九段と対戦。序盤の駆け引きから、豊島は意表の四間飛車。藤井は歩損ながらガッチリと四枚穴熊に固める。堅さを生かした飛車角交換の決戦に持ち込み、細い攻めをつなぐ展開になる。形勢は難解ながら堅陣は勝ちやすく、終盤で抜け出して最後は大差で押し切った。これで4勝目をあげて名人初防衛を果たした。タイトルは通算22期目。 5月31日に叡王戦第4局で伊藤七段と対戦。カド番の本局は、後手番で角換わり腰掛け銀の真っ向勝負に。じっくりとした駒組の結果、伊藤は穴熊、藤井は右玉に構える。先手の動きに乗じてカウンターでペースをつかむ。細かい攻めで着実に差を広げていき、盤石の態勢で押し切った。これで五番勝負は2勝2敗に。最終第5局は6月20日(木)に行われる。 第95期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負の挑戦者は山崎隆之八段(1勝1敗)に決定。第1局は6月6日(木)に行われる。藤井にとっては初の永世称号が懸かる防衛戦だ。 伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負の挑戦者は渡辺明九段(20勝4敗)に決定。第1局は7月6、7日(土、日)に行われる。こちらも永世王位が懸かる防衛戦だ。 第74回NHK杯将棋トーナメント本戦で、藤井は2回戦で木村一基九段─西山朋佳女流三冠の勝者と対戦する。 第45回将棋日本シリーズJTプロ公式戦のトーナメント表が発表。前回優勝の藤井は9月21日に行われる二回戦で羽生善治九段─佐々木大地七段戦の勝者と対局する。 ABEMAトーナメント2024で藤井はリーダーとして出場。チームメイトには羽生善治九段と青嶋未来六段を指名。予選はCリーグに入り、チーム天彦(佐藤天彦九段、斎藤明日斗五段、山本博志四段)、チーム豊島(糸谷哲郎八段、大石直嗣七段)と対戦する。 5月25日に放映された予選の初戦はチーム豊島と対戦。藤井は3連勝、チームも5勝3敗と勝利に導いた。 文=渡部壮大
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