次はプラスチックか-中国の供給急増、新たな貿易摩擦生む恐れ
(ブルームバーグ): 中国でプラスチック供給が急増している。国内需要の低迷で輸出に回される可能性があり、国際貿易を巡る新たな課題となりつつある。
ロジウム・グループのアソシエートディレクター、チャーリー・ベスト氏は「鉄鋼とソーラーパネルに続き、中国の構造的不均衡が明らかに世界市場に波及している新たな一例だ」と述べる。同氏はニューヨークを拠点とし、米中関係と中国の産業政策が専門。
オックスフォード・エネルギー研究所で中国エネルギー研究プログラムのディレクターを務めるミカル・メイダン氏は、「化学製品に関する中国の過剰生産能力は過小評価されているリスクだ」と指摘。「欧米の業界は、出現する可能性のある過剰生産能力の量と質の両方を過小に見積もっている」と警鐘を鳴らす。
中国では工場が現在、短期間の操業停止と稼働率抑制で供給急増を乗り切っている。ただ、生産能力の増強が続けば、余剰は増大し、中国が多くの製品で主要な輸出国に転じるのに十分な量に達すると石油化学セクターの企業幹部やアナリストはみている。しばしば供給過剰に陥り、すで問題となっている貿易摩擦を悪化させ得るという。
業界一変
中国のプラスチックブームは世界の石油化学業界を一変させた。他国のライバルが減速している今、中国の民間と国有の石油精製会社が圧倒的な力を得つつある。
コンサルティング会社ウッド・マッケンジーの石油化学アナリスト、ケリー・キュイ氏は「2020年から27年にかけての中国の大規模な投資は、世界の供給力学を再構築し、アジアにおける構造的な余剰と、持続的な利益率の低さもしくはマイナスをもたらしている」と分析。
中国がまだ増設を続けているにもかかわらず、世界のエチレン生産能力のほぼ4分の1が閉鎖の危機にひんしていると同社は推定している。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、19年から24年末までの間に、中国は原油やガスをエチレンやプロピレンといった製品(ペットボトルから機械まであらゆるものを支える材料)に転換するプラントを数多く完成させ、その設備容量は欧州と日本、韓国を合わせた規模に匹敵する。