観終わったら“シャマらん”気分になるのは間違いないです【みうらじゅんの映画チラシ放談】『ザ・ウォッチャーズ』『ジョン・レノン 失われた週末』
みうらじゅんさんの前に近々公開される映画のチラシを大量にお持ちして、グッとくるチラシを厳正にピックアップ。映画本編は観ていないので事前知識はほぼゼロ、頼りになるのはチラシ内の情報(と妄想)だけという状態で語っていただく、言いっぱなしの映画チラシ放談です。(ぴあアプリ「みうらじゅんの映画チラシ放談」より転載) 【全ての画像】『ザ・ウォッチャーズ』『ジョン・レノン 失われた週末』
『ザ・ウォッチャーズ』
――今回の1枚目のチラシは、M.ナイト・シャマラン監督の実娘イシャナ・ナイト・シャマランの長編監督デビュー作、『ザ・ウォッチャーズ』です。 みうら これは娘さんの仕業ですか。どちらにせよ、“シャマらん!”ことには間違いありませんよね(笑)。最近、森がざわざわする映画を観たもので、つい。 ――M.ナイト・シャマランの前作なら『ノック 終末の訪問者』ですね。 みうら それです、それです。タイトルをすっかり忘れてました(笑)。「シャマらんな」っていう言葉には意味がふたつあるでしょ? 「面白いだろうな」っていうのと、「またいつものパターンだろうな」っていうのがね。だからいつも観にいくかどうかちょっと悩んじゃうんですよね。 『オールド』を観にいったときも迷いましたけど、よくよく考えると“シャマらん”気分を味わいたいのが目的ですから、「もう今後は迷わず観にいく!」って決めたんです。そうしたら気が楽になりました。 だからこの『ザ・ウォッチャーズ』も、チラシやタイトルから予想するってことは意味がない。そんなことは関係ないんです。だから真のタイトルは「脚本・監督、イシャナ・ナイト・シャマラン 製作、M.ナイト・シャマラン」です。『ザ・ウォッチャーズ』は副題と考えた方がいいでしょう。 ――なるほど。 みうら チラシで読み解く連載ではあるんですけど、想像してもしょうがないなとは思うんです。だって、観終わったらシャマらん気分になるのは間違いないわけですし。それに毎度、意外とストレートじゃないですか。タイトルに忠実というか。 ――確かにM.ナイト・シャマランは、世間で思われてるような“どんでん返し”が売りの人ではないですよね。 みうら そうなんですよ。実は意外と真相はタイトルと同じの場合が多い。だからこの『ザ・ウォッチャーズ』も、単に誰か複数の者が観てるんだと思いますよ。そこの期待を裏切らないのも“シャマらん!”ですから。 ――シャマラン映画では「まさかこんなことが?」っていう珍事は、大概本当に起こりますもんね。 みうら 間違いなくね。だからチラシにも書いてあるように、誰かがずっと見てる、そして見られてるっていうお話に決まってます。だから問題なのは、何に見られてるのかってとこですね。 フツーの考えなら宇宙人か怪物みたいなヤツらがどこかから人間を監視しているってことになるんでしょうが、きっと僕たちが思ってる以上に見てるんでしょうね(笑)。想像をはるかに超えてしつこく見られてるって話ですかね。 ――このチラシ、裏も表もほとんど同じですね。それもしつこいですね。 みうら しつこいにもほどがありますね(笑)。普通だったら、チラシのオモテが見られてる側なら、ウラ面は見てる側の写真にするところじゃないですか。 意外にね、見てるのは怪物じゃなく、チラシに写っている4人の両親がずっと成長を見守っているのかもしれない。彼らも「もう大人なんだから勘弁してくれよ、おかん……」って言ってるのかもしれませんよ。 ――4人立ってるのに「見知らぬ3人」って書いてません? みうら 確かに書いてありますね! はっはーん! 「私たちからは見えない」と書いてますから、つまりこの4人の中に、他の3人からは見えないヤツがひとりいるんですね。「奴らはずっと見ている」っていうのは、実は中に監視している奴がいるってことですよ。何もこのチラシの写真、外から見てるんじゃないんです。シャマらんなぁ! チラシではすごくSFっぽく見えるけど、これはただの野外ステージかもしれないですね。「4人のうちのひとりが他の3人を見てる」芝居上演の。 まさかなって思ったことはみな、シャマらん! 「やっぱり」だったりしますからね。 ――シャマラン映画の「まさか」はほぼほぼ正解ですからね(笑)。でも今回は娘のイシャナの作品なんですけど。 みうら そうでしたね。でも、娘さんは過去のシャマらん作品に参加しているみたいじゃないですか。 ――だから、まさかはやっぱりですよ、きっと(笑)。 みうら やっぱ、想像するだけ時間がムダです。“シャマらん”気分になりたい人は必ず観に行くしかないでしょうしね(笑)。