JCはムーア騎手の“世界の技”に注目
【競馬人生劇場・平松さとし】 今週末、ジャパンC(G1)が行われる。世界に知れ渡るビッグレースらしく、勝利騎手にも一流の名が並ぶ。武豊騎手やルメール騎手が4勝しているが、通年免許を取得していないのに2勝しているのがライアン・ムーア騎手だ。 2勝目は22年のヴェラアズール。その手綱さばきに舌を巻いたのが、同馬を管理した渡辺薫彦調教師だ。「かかる可能性が少しある馬なのに、スタートから出して行って好位を取ると、そこでぴったり折り合わせました」。道中は馬群の中でかなりモマれるシーンがあった。しかし、そこでも「技が光った」と続ける。「包まれてかなり厳しくなったのに、引っ張ることなく、ちゃんと踏みながら前が空くのを待っていました」 だから、わずかに前が空いた途端、一気に加速できた。その結果、2着のシャフリヤールに3/4馬身の差をつけて真っ先にゴールイン。ムーア騎手の手腕でヴェラアズールにも渡辺調教師にも初のG1制覇をもたらした。 話はレース前までさかのぼる。ヴェラアズールに初騎乗となるムーア騎手と、作戦会議をしようとした指揮官は驚かされた。「折り合いなど、注意点を伝えようと考えていたのですが“レースをチェックしたら少しかかる面があるみたいなので、そのあたりに気をつけようと思います”と先に言われました。これはもう余計なことは言わない方がいい」。そう思い、全て任せたそうだ。 さて、そのムーア騎手は今年のジャパンCでオーギュストロダンに騎乗する。アイルランドの伯楽A・オブライエン調教師が管理するこのディープインパクト産駒は昨年、英ダービーを勝つと返す刀でアイリッシュダービーも優勝。他にもブリーダーズCターフ(G1)など、ここまでG1を6勝。今回のジャパンCがラストランとなる。ムーア騎手で有終の美を飾るのか、それとも日本の名手・武豊騎手が操るドウデュースが立ちはだかるのか。注目したい。 (フリーライター)