地方に人を呼び込む美食×観光「ガストロノミーツーリズム」とは【WBSクロス】
「ガストロノミー」とは、フランス語で「美食」という意味です。この「美食」と「観光」を掛け合わせた取り組み=ガストロノミーツーリズムが「地方活性化の起爆剤」として、政府や企業から注目を集めています。 人口約3000人の北海道・豊頃町。町から離れた海沿いの立地に世界中から客が訪れるレストランがあります。2年前にオープンした「エレゾ エスプリ」です。 この日やってきたのは、オーストラリアから来た観光客です。美食が観光の目的になる、これがガストロノミーツーリズムです。 観光客を出迎えたのは店のオーナーシェフ佐々木章大さん。佐々木さんが案内したのはレストランではなく、近くにある自社農場「エレゾファーム」です。ガストロノミーツーリズムでは、食を通じてその土地の文化や伝統を学ぶことも重視されます。 自社農場の隣には肉の加工場があります。案内されたのは肉の一次処理室。地元のハンターに仕留められたエゾシカは90分以内にこの施設に運ばれます。 佐々木さんは「食肉の従事者に対して消費者や料理人は感謝が希薄。世の中の人たちにもっと知ってもらうべきだと思う」と、家畜の飼育から肉の加工、料理に至るまで自社で行っているというこだわりを客に伝えました。 午後7時、ディナーがスタートしました。世界の美食家もうなるというのが、自社農場の強みを生かして作った鴨のパテや放牧豚のサラミや生ハムです。一口食べた客は「こんなパテは食べたことがない。とてもおいしい」と感動した様子です。
メインディッシュは地元で狩猟したエゾシカのヒレ肉です。 「自然や生き物から感じる本質を料理に吹き込んでいる」(佐々木さん) その味に客は「本当に素晴らしい。これまでで最高の体験だ。ここでディナーを食べるためなら、毎年北海道に来る」と話しました。 「エレゾ エスプリ」は宿泊施設も備えていて、その料金は料理と宿泊費で1人5万5000円から。料理にほれ込みリピーターになる人も多く、客の約4割が外国人です。 「地方にこそ食の豊かさ、本質が集まっているので、地方から発信できるような力が各エリアで生まれたら最高だと思う」(佐々木さん)