ル・マンで完走した女性ドライバー 元レースクイーンの異色の経歴
FIFAワールドカップブラジル大会で日本がコートジボワールに苦杯を舐めた15日。フランスのサルト・サーキットで開催された『第82回ル・マン24時間レース』で、日本人女性ドライバーの井原慶子さんが、参戦した日本人ドライバー最高位である総合14位で見事に完走し、LMP2(ル・マン プロトタイプ2)クラスで9位入賞を果たしました。井原さん自身3度目のル・マン挑戦で完走したのは初めてのこと。伝統あるル・マンで完走したのは、アジア人女性初の快挙です。
F1ドライバーを抑えて日本人最高位
今年のレースでは元F1ドライバーの中嶋一貴選手が予選でポールポジションを獲得し、決勝でもレース開始から14時間が経過するまでトップを走り注目を集めました。残念ながら中島選手のマシンは電気系のトラブルでリタイアとなり、終わってみれば、中島選手や中野信治選手といった元F1ドライバーを抑えて、井原さんが今年のル・マンで日本人ドライバー最高位という結果を残したのです。 井原さんは1973年生まれの40歳。学生時代からモデルを始め、レースクイーンとして訪れたサーキットでモータースポーツに出会い、「自分も走りたい」と一念発起して運転免許を取得。レーシングドライバーとしてのキャリアを積み上げてきた異色の経歴の持ち主です。デビューは25歳と遅く、「女性には無理」と言われながらもあきらめることなく、単身ヨーロッパで修行するなどして、地道にキャリアを重ねてきました。 LMP2クラスの上には「LMP1」があり、今回の完走&入賞も、レース界の「格」からすると、特筆すべき結果ではないという見方もあります。でも、ドライバーになるという夢を抱いた元レースクイーンが、世界最高峰のレースともいえる「ル・マン24時間」でシートを獲得し、完走を果たしたことは、もっと日本人全体が讃えるべきすばらしい出来事といえるでしょう。
ドライバーズランキングで女性最高位の22位
2013年、井原さんは参戦するWEC世界耐久選手権シリーズ(ル・マン24時間も含まれる)のドライバーズランキングで女性最高位となる22位を獲得。世界最速の女性ドライバーとして評価されています。ル・マンは終わっても今年のシリーズ戦は続いていくので、今後もさらにアグレッシブな走りを見せてくれることでしょう。 また、井原さんはサーキットの外でも教育や環境問題などに関する国際的な活動に取り組んでいます。2012年には「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」の1人にも選ばれました。今年はBMW「iシリーズ」(電気自動車)のスポークスパーソンに就任し、エコカーの普及活動にも取り組んでいます。 世界に飛び出して戦っているのは、サッカーや野球の選手だけではありません。レースクイーンから世界のトップドライバーに登り詰めたキャリアは、多くの普通の日本人を勇気づけてくれるお手本ともいえます。サーキットで磨いた語学力を活かして、多方面で活躍する井原さんの今後に注目したいですね。 (寄本好則/三軒茶屋ファクトリー)