ひとり暮らしでぶつけた小指…やり場のない痛みだったけど 「助けてもらった気がするよ」 マンガ夜廻り猫
ひとり暮らしの男性が、たんすの角に小指をぶつけて悶絶していて――。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、SNSで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、〝ひとり暮らし〟にまつわるエピソードです。 【マンガ】ひとり暮らしの男性「ささいなことを気にしてもらったの、何年ぶりだろう」
誰かに気にしてもらったの、何年ぶりか
きょうも夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵と、子猫の重郎。アパートからの涙の匂いに気づきました。 部屋では、ひとり暮らしの男性が「たんすの角に、足の小指、思い切りぶつけた……」と言って、やり場のない痛みに苦しんでいます。 「お気の毒に」と言いながら、遠藤も重郎も痛みが和らぐように、そばで祈ります。 しばらくすると、男性は「おさまってきた」とひと心地つきます。 「俺、ひとり暮らしが長くてさ 最後は孤独死の覚悟だけど、こんなささいなことを誰かに気にしてもらったの、何年ぶりだろう うれしいもんだね」 遠藤は「何の役にも立ってない」と謙遜しますが、男性は「そうかな?助けてもらった気がするよ」と言ってほほえむのでした。
人からもらった、忘れられない温情
作者の深谷さんは「人からもらった、忘れられない温情ってありますよね」と話します。 「ああ、気の毒に」「手伝うよ」「楽しかった」といった短い言葉だったり、心配してくれている表情だったり……。 「そういうものの多くは『お約束』という感じで発生することが多いですが、たまに期待もしていない時に、100%こちらへの思いやりだと感じられることがありました。ささやかでも、忘れたくない宝物です」 【マンガ「夜廻り猫」】 猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。 泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。 そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。 ◇ 深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞、単行本10巻(講談社)が2023年11月22日に発売。講談社「コミックDAYS 編集部ブログ」で月・金曜夜に連載中。アニメ化し、NHK総合で再放送中。スピンオフ「居酒屋ワカル」は講談社「コクリコ」で連載した単行本が11月22日に発売。