東芝、メモリー分社化で過半数の株売却も 原発関連の損失は7125億円
東芝は14日、2016年度4~12月期連結決算の発表を延期し、監査法人承認前の暫定的な決算を公表した。米原発事業関連での損失額は7125億円に上り、純損益は4999億円の赤字となる見通し。昨年12月末時点での株主資本は1912億円のマイナスで、債務超過に陥る。この苦境を脱するために、半導体メモリー事業の分社化では、自社の出資比率が50%未満になることも辞さない方針を示した。 【中継録画】志賀会長が辞任、決算発表延期 東芝が記者会見
WHによる買収絡みの内部通報で正式決算延期
原発関連の損失額7125億円のうち、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)による米原発建設会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)の買収に絡む損失額は6253億円で、買収完了時の当初想定の約60倍弱となった。今回示した暫定決算はあくまでも監査前の数字であり、同日会見した綱川智社長は「今後さらに下方修正する可能性もある」と述べた。 2016年度の通期では、株主資本が約1500億円の債務超過になると予想したが、これは半導体メモリー事業の分社化などの資本対策を実施する前の数字とした。 先月発表されたメモリー事業の分社化をめぐっては当初、外部資本の出資比率を20%未満とする方針だった。しかしこの日の会見では「柔軟に考える」(綱川社長)と述べ、過半数の株式売却も検討すると方針転換した。綱川社長はその理由を「今、オファーをいろいろもらっている。その中で一番良い選択肢を柔軟に考えるため、マジョリティーにこだわらないことにした」と説明。外部資本が100%になる可能性もあるかとの問いにも「すべての可能性がありうる」と答え、メモリー事業そのものを完全に手放す選択肢も否定しなかった。 WHについても「興味を持ってもらえるパートナーとは一緒にやっていく。いま80数%の株を持っているが、下げることを考えている」として、今後の状況次第で出資比率を下げる考えを表明した。50%以下に下げる選択肢もあるという。 第3四半期の決算は14日に発表される予定だったが、当日になって公表を1か月延期した。その理由は、WHによるS&Wの買収に絡んで「内部統制の不備」を指摘する内部通報などがあり、さらなる調査が必要との結論に至ったためだと説明した。綱川社長は陳謝し、「3月14日が提出期限だが、可能な限り早期の提出に全力を尽くす」として、できるだけ前倒ししたい考えを示した。 (取材・文:具志堅浩二)