Apple「マッキントッシュ」発売から40年。開発の難局を乗り越えるきっかけとなったジョブズの言葉
ジョブズの「現実歪曲フィールド」
アイザックソンによれば、この電話のあと、開発チームは「ソフトを完成させるしかない」と悟ったそうです。 約1週間徹夜を続け、最後の数日間は特大パッケージの「チョコレートでコーティングされたエスプレッソ用のコーヒー豆」を食べてやり切りました。 翌日の早朝、すべてを取りまとめ、ジョブズが午前8時半に出社して正式承認し、プログラマーたちが1週間ぶりにオフィスを出ると、「Appleのフリーモント工場では、マッキントッシュのカラフルな線画で飾られた箱が運び出されはじめた」のです。 昔(文字通り40年前)の話だということはわかっていますが、簡単に考察してみる価値があるのは、ジョブズの言葉が社員の疑念に異なる視点を与え決意へと変えたのはなぜか、ということです。それには次の3つの要素があると思います。 第一に、ジョブズは「経験」の枠組みを変えました。最初の一文で、コーダーたちが感じていた時間のなさの見方が変わりました。残された時間がどれだけ少ないかではなく、すでにどれだけたくさんの時間をかけどれだけのことを成し遂げたかに焦点を当てたのです。 第二に、「感情」の枠組みも変えました。正直に言えば、ジョブズのアドバイスは私が同じ状況でするだろうアドバイスよりも直接的ですが(「終わらせたほうがいい」)、感情よりも行動を優先させるという雰囲気をつくりました。 最後に、「結果」の枠組みも変えました。プログラマーたちは、自分たちの能力に合わせてスケジュールが変更されることを想定し会議に臨みましたが、ジョブズがコードを自分たちの名前付きで(準備ができているかどうかは関係なく)発送することにしようと告げると、期限を合わせて自分たちの能力を変える気になったのです。
慕われることとリーダーであること
これがすべての人、あるいはすべての状況でうまくいくとは言いません。 また、このチームの開発者たちが退社の際にジョブズのことを慕っていたか、また一緒にプロジェクトをやりたいと思っていたかどうかも定かではありません。 しかし、時にリーダーシップとは慕われることではなく、導くことでもあります。 リーダーとして、チームの時間と労力を正当化できるくらい重要な目標を明示することができ、またメンバーを本当に信じているのであれば、自分たちにできると考えている以上のことを達成するようチームをあと押しするしかない時もあるのです。 最後に、テレビ広告「1984 」と、ジョブズのプレゼンテーションの「失われた」バージョン(少なくともその要約版)へのリンクはこちらです。 Source: Amazon, YouTube(1, 2) Originally published by Inc. [原文] Copyright © 2024 Mansueto Ventures LLC.
白井樹(OCiETe)